連載
» 2008年02月29日 10時40分 UPDATE

文具王の「B-Hacks!」:手紙を“標本化”して保存する

できるだけ多くの書類をスキャンして省スペース化を図っている筆者だが、どうしても捨てられない紙がある。その筆頭が手紙だ――。

[高畑正幸,ITmedia]

 最近はできるだけ多くの書類をスキャンして省スペース化を図っている筆者だが、どうしても捨てられない紙がある。その筆頭が手紙だ。学生時代からそうなのだが、手紙というやつはどうしても捨てにくい。今回は筆者の手紙(私信)の保存方法について書こうと思う。

サイズもカタチも統一されていない手紙、整理しにくいけど「そこがいい」

 あらかじめ断っておくが、自分に来た手紙を保存するというのはハッキリ言って自己満足。ハックと言うにはあまりに個人的かつ趣味的だ。情報としてのストックではなく、単に頂いたプレゼントのコレクションという意味であって、これが直接何かを生むというわけではないし、ましてやビジネスがスピードアップしたりはしない。また、システマチックに考えればスキャンして廃棄というのが正解かもしれない。が「あえて捨てないとすると」という話である(言い訳がましいなあ)。

 しかし手紙というのは、そのままでは整理には向いていない。サイズもカタチも、統一されていないからだ。だいいち、てんでバラバラの封筒に入っている。中には、その人からの手紙は毎回同じ封筒、という人もいなくはない。みんながそうだったらどれほど整理が楽か――としばしば思うのだが、同じでない封筒の方が手に取ったときにうれしかったりするあたり、人間、身勝手なものだ。

 この手紙だが、自分以外の人が受け取ったところを思い出してみると、実在の人物も、テレビや映画などでも、筆者の知る限りほとんどの人は、封筒を手に取り、封を切り、便せんを取り出して開き、読みふける。ひとしきり、にやにやしたり難しい顔をしたりした後、さっきと全く逆の手順で便せんを折り畳み、またもとの封筒に入れて机などに置く。残念ながら筆者の知る他人の行動観察映像はそこで終わる。この後は? 捨てる? それともどこかに保管しているのだろうか?

 仮に捨てなかったと仮定すると、最も想像しやすいのはそのまま引き出しや箱のようなものに入れるという行動か。しかし、これでは秋の公園の枯れ葉みたいに積み上がるだけではないか。いったいどれがいつ届いたものかもよく分からないし、内容を読もうと思ったらまた便せんを取り出して開かなくてはならない。本当のところ、ほかの人はどうやってそういうものをしまっているのだろう? ハガキについては、いろいろと専用の収納・整理グッズがあるが、手紙全般についてはほとんど聞いたことがない。

規格統一断固A4派の筆者が始めた手紙の“標本化”

 この問題については、中学生のころから試行錯誤している。当時はB5判のクリアファイルに順番に入れていた。1ポケットの片側に便せんを広げ、封筒を入れたのである。まあ、これでもファイリングされているおかげで、今でもその手紙を読むことはできる。しかし、やはり1ページを超える分量のものはすべて、一度ポケットから取り出さなくてはならない。それに、ファイルの厚みの割には中身が入らないので、けっこうかさばるのだ。今見ると市販されているレターセットの多くはB5サイズ以下なので、だいたいは収まっているが、B5判というのも今となっては納得いかない。手紙も書類は書類だ。規格統一断固A4派を主張するのであればここはぜひA4判にしたい。そこで、大学生のころから始めたのが、手紙の“標本化”である。

 中学生のころ、筆者にファイリングやリポートの書き方の基礎を教えてくれた老教師は植物学者であった。植物学者は、植物のサンプル(不定型)を保管する場合に、定型の台紙に押し花状態にして張り付け、台紙をファイリングしていく。写真やコピーではなく現物を残すことに大きな意味がある。植物は昆虫や動物などと違って、押せばなんとか平面的になるものが多いから標本にできるわけだが、これは手紙にも応用できると考えた。

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 筆者の場合は、A4判のルーズリーフリフィルか、前にご紹介したゲージパンチで穴を開けた紙などに手紙を張り付けてA4化する。当然、切り抜きなどと共通のバインダーを使う。紙はA4判なら何でも構わないが、手紙や封筒に厚みがある場合もあるので多少コシがあった方がいい。筆者は無地のコピー用紙にゲージパンチで穴を開けた物をベースに使用している。基本的にはこれ1枚に1通を張り付ける。たいていの場合は片面に便せん、片面に封筒だ。封筒は表裏があるので、開封する際に1辺ではなく3辺を切って“開き”にして張り付ける。

 このとき便利なのがレターナイフ。通常のカッターを使ってしまうと、折り目以外のところで切れてしまう。金属製のしっかり握れる物がいいと思う。張り方は適当。物にもよるが、テープのりやホチキスでとめる。テープのりを使うと仕上がりは良いが、ホチキスで適当に留めても十分だし、数枚にわたる便せんは上端などを留めて、めくれるようにしておく。張り付けると読めなくなる面がどうしてもできてしまうが、できるだけ情報のない面を接着面にするようにすれば、ほとんどの手紙はなんとかなる。袋状のクリアファイルを使わないのは厚みの問題もあるが、筆者は手ざわりフェチなので、じかに触れるようにしておきたいからだ。

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 こうすると、1通が1葉の台紙になんとか収まる。これでめでたくほかの書類と同じように本棚に立てて並べることが可能になった。ルーズリーフなので、後から「割り込み」も問題ないし、台紙は無尽蔵に用意できる。文章で書くとなんだかめんどくさそうに感じるかもしれないが、手紙を開封するときに最初から3辺を開いてしまえば、袋に入れるより簡単だ。分厚いファイル本体を手元に持たなくてもコピー用紙に張る作業はできるので、会社で開封したものなどでもとりあえず手近にあるものは端からA4コピー紙にホチキスで留めておいて自宅で穴を開けてファイルに入れる。

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「オリジナル」に意味がある

 封筒を開いたり張り付けたりする行為に抵抗を感じる人や、手紙まで書類と同じファイルにしなくても、というご意見もあろうかと思うが、箱に入れたままよりもよほど保存状態も良好なので、一種の押し花やスクラップ趣味と思えばよいのではないかと思う。私信の保管方法なんて、トイレでの尻のふき方ぐらい個人的なことなので、余計なお世話だが、筆者自身、ほかの人のやり方が分からないので、あえてここに表明してみた次第だ。もっと良い方法やグッズをご存じの場合は、教えていただけるとありがたい。乗り換えるかもしれない。

 最初にも言い訳したとおり、記載されている情報の意味からすると、手紙の現物を保管するという行為自体に必要性はほとんどない。仮に情報が必要な場合でも、スキャンでもして保管すれば場所もとらなくてすむ。

 しかし、手紙、特に手書きの私信というのは、量産された印刷物やメールとは異なり、差出人が制作している間、その作業のためだけに(私のためだけに)貴重な人生の時間の一部を消費した物的証拠である。手紙はそうした時間が結晶化したものだと思っているので、誰かが私のためだけに使ってくれた人生の時間の一部をコレクションしているようなものだ。そう考えると「オリジナル」に意味があるし、その何冊もの分厚いファイルの重さが心地よかったりして、なかなか「スキャンして廃棄」とはしにくいのである。

著者紹介 高畑正幸(たかばたけ・まさゆき)

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 1974年、香川県生まれ。図画工作と理科が得意な小学生を20年続けて今に至る。TVチャンピオン「全国文房具通選手権」で3連覇中の文具王。現在は文具メーカーに勤務、文房具の企画開発を行っている。2006年「究極の文房具カタログ」上梓。文具サイト「TOWER-STATIONERY」を主催。


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