そのために何をするかというと、部下指導で「結果」について話し合うのではなく、結果に影響を与えることができる「行動」について部下と話し合います。例えば、今日は20件電話をかけるのか、電話を1本もかけずに外回りで5件回るのか、午前中に何件回るのか、企画書を何枚書くのか、など、部下の物理的な行動はコントロールできます。そして部下も、行動はだいたいその通りやります。
反対に、「今日は100万円売り上げるまで帰るな」「今月は20件とるまで戻ってくるな」と、「結果」について言及しても、その通りにはなりません。なぜなら、その結果を出すために、自分で考えることができる有能な部下は、いいですが、できない部下は、どんな行動をとればいいのか分からないからです。結局、指示型マネジメントになり、上司が予想する行動以上のことはなされません。望む結果が出ないと、上司は怒って責めるでしょう。でも、責めても業績は上がりません。
できない部下は、「10件契約を取れ」と言われても、できないのです。「根性で取れ!」と言われても、どうしていいか分かりません。10件の契約を取るために、電話をしたほうがいいのか、リストアップするほうがいいのか、コネを作ったほうがいいのか、といったことが分からないのです。だから、結果につながる可能性の高い行動についてディスカッションします。するべき行動について話し合ったり、教えたりしてください。そうすれば、部下の業績がだんだん右側のコントロールできるほうに移っていきます。
やりがちなのが、以下のようなやりとりです。
部下 来週までに10本取ってきます!
上司 10本だな。どうやって?
部下 がんばります!
上司 よし、がんばってこい!
(1週間後)
部下 5本しか取れませんでした……
上司 ダメだな。どうする?
部下 もっと気合を入れます!
上司 じゃあ、気合を入れて、次こそ10本だ!
これはコーチングではありません。上司だったら10本取るためにする行動のレパートリーがあるでしょう。しかし、この部下の中にはレパートリーがないのです。だから、教えるか、部下から引き出すかしなくてはなりません。できれば、引き出すことを先にしてほしいですね。なぜなら、彼らが実際に現場を回っていて、上司の時代とは違う何かをかぎとっている可能性があるからです。それがあれば吸い取りたい。なければ、「私はこの方法がいいと思う」とか、「まずこの方法でやってみよう」という感じで教えてください。そうすれば、部下にも納得感があります。
実際に行動してみて結果が出れば自信がつき、さらに業績が上がる可能性があります。仮にうまくいかなくても、それなりに学んだ、成長した、という達成感は得られるはずです。
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