第5回 4種類の単純なシナリオパターンを応用しよう新入社員がやってくる──専門知識を教える技術(1/5 ページ)

「これ、高校の時に読んでおけばよかったなあ!!」 何かと思って見てみると、彼が読んでいたのは中国の「漢」帝国を作った劉邦とその宿敵であった項羽との戦いを描いた小説でした。こうした“シナリオ”があれば、高校の漢文もよく理解できたはず――。

» 2008年03月25日 15時00分 公開
[開米瑞浩,ITmedia]

 “専門知識の教育”をテーマにとことん解説する本連載「新入社員がやってくる──専門知識を教える技術」も5回目を迎えました。前回

  • 構造×シナリオ×アクション

 のかけ算で「教える仕事」が成り立つという話を書きましたが、今回はこのうち「シナリオ」について考えてみましょう。

シナリオの持つ力を知っていますか?

 大学に入ったばかりの頃、歴史小説好きの友人がおりました。その彼がある本を読みながらしみじみこんなことをつぶやいたことがあります。

 「いやあ……これ、高校の時に読んでおけばよかったなあ!!」

 何かと思って見てみると、彼が読んでいたのは中国の「漢」帝国を作った劉邦とその宿敵であった項羽との戦いを描いた小説でした。

 「高校の時に読んでおけばよかったって、どうしてさ?」

 「いや、これ読んでれば漢文の勉強がずっと楽だったはずだよ!」

 と彼は言うわけです。そこで私もその本を借りて読んでみるとこれが実に面白い。確かにこれがあれば高校の漢文の時間に出てきた項羽と劉邦の戦いのシーンがよく分かる。何だ、あれってこんなオモロイ話だったんかいコンチクショー!! と、私も友人に同調して盛り上がったことがありました。

 この一件は、「シナリオ」の持つ力の一例です。「項羽と劉邦」という同じネタ(構造)を元にしながら、きちんとドラマを意識してシナリオ×アクションを構成するかどうかで、伝達力がまったく変わってくるわけです。

 もちろん、漢文の授業というのは別にドラマを楽しんでもらうためにあるのではなく、文法などの知識を覚えさせるためにあるわけで、目的は違います。でも、だからといって「娯楽じゃないんだからシナリオなんて必要ない」というわけにはいきません。この「項羽と劉邦」の場合、そもそも国語系の教科には何の興味もなかった私は高校の授業中まったくやる気が起きず、面白くもなんともない漢文を前にしてすっかり居眠りタイムになっていたのが実情です。もし先に小説のほうを読んでいたら話は違ったことでしょう。

 先に小説を読んでいれば、漢文を読んだ時にそのシーンをイメージできました。何かを勉強する時には、この「イメージがわく」かどうかが極めて重要です。この「イメージ」を構成するために用意しなければいけないもの――それが「シナリオ」なのです。

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