“究極のカード”を毎日使う情報カードに利用する文具王の「B-Hacks!」

いまだに自分の考えをまとめるのは「紙の上」である筆者。単語カードや名刺サイズの情報カードを使っていたのだが、いずれもイマイチ。そんな時、とあるCMを見ていて気付いた“究極のカード”がトランプだった。

» 2008年04月08日 10時30分 公開
[高畑正幸,ITmedia]

 筆者は、昔から頭の中で情報を操作するのが苦手だ。いまだに自分の考えをまとめるのは紙の上。ある時はノートに、ある時はコピー用紙に、そして付せんに、情報カードに。書いては消してを繰り返す。情報をあっちからこっちへと移動するのを、頭の中の小さなデスクの上では全く処理しきれないから、紙の上に書き出して整理する。この連載も、毎回1枚の紙の上に書き散らされた情報の断片が元になっている。PC用の便利なアウトラインプロセッサやマインドマップ作成ソフトなどもあるが、結局どうにも紙から離れられない。

「紙に書き出して考える」ための最適ツールとは

 筆者の場合、脳の中で保持したまま操作するのが困難な情報を、目の前の物理的な紙やテーブルの上に取り出し、手で操作して組み立て、自分の脳の“メモリ不足”を補っているようである。脳の中でも手を動かすための領野は大きな部分を占めているわけだから、ある意味では握り拳を額に当てた“ロダン”スタイルよりも、脳の広い部分に作業が分散して負荷が軽いのかもしれない。実際ロダンほど力むことはあまりない。そういえば昔、数学の先生に「どんどん手を動かして考えろ!」と言われたのを思い出す。

 説明しづらいが、外部に取り出した机の上のカードの配列も自分の知の一部なのだ。そしてそれら物質化した情報には「手ざわり」や「量感」があって、自分にとってはそれらも含めて情報だ。そんなことだから、筆者は情報カードや付せんなどをよく使う。今回は、その中でも毎日のチェックリストを中心に筆者が使っている「カード」をご紹介しよう。なお、情報カード の使い方については、多くの先人たちがいて、きちんした解説本もたくさん出ているので、今回は割愛させていただく。

 日々新しくできては消えていくToDoについては、わざわざカードにはせずに手帳のリストを使っているが、明らかに毎日こなす仕事、例えば報告書や伝票の処理、デジタル機器の充電、データのコピー、整理、補充品のチェックなどは、カードを使ってチェックしている。もちろん一覧表でもいいのだが、これらの処理は隙間時間にする作業だし、必要なければ飛ばして次に行く。こうしたある種ランダムな処理の場合、チェックリストならリストにチェックを入れて消していかなければ、どれが終わってるのかいちいち思い出す必要がある。だが、カードなら処理の済んだものを束から外していけば、残っているのが未処理の作業だ。毎日の作業カードなら、毎朝これをリセットして元の束に戻し、また1枚ずつ外せばいい。作業が物質的な形で減っていくのがちょっと気持ちいい。

 以前はこの作業に、単語カード(学生時代英単語などを覚えるのによく使用したリング付のカード)や名刺サイズの情報カードを使っていたのだが、リング付の単語カードは処理済みの作業を取り外すのが面倒だし、情報カードは毎日使用するとすぐヨレヨレになってしまっていてイマイチな感じであった。

ライフカードのCMで見た“究極のカード”

バイスクルの「ブランクフェイス」

 ある時、テレビを見ていると、ライフカードのCMで、オダギリジョーが「どうする? 俺!」といいながら人生の選択肢を書いたトランプのどのカードを切るかを悩んでいた。このCMを見て、トランプだ! と思って、手品グッズ売り場に向かった。探したのは片面無地のトランプ。

 購入したのは手品用のバイスクルというブランドの「ブランクフェイス」という片面無地のトランプ。バイスクルは、ゲーム用のトランプだが、カードマジックなどでもよく使用される有名ブランドらしい。そういえばテレビなどでマジシャンがよく使っているのと同じ柄だと思う(筆者が購入したのはポーカー用だがゲームによってサイズが異なるようだ)。


片面が無地になっている

 厚みはそれほどでもないのに非常に強いコシと張りのある紙で、表面には絹目のコーティングが施されている。滑りの良さ、手に持ったときのしっくり感、そして何より抜群の耐久性! さすがに長いギャンブルの歴史が培ってきたノウハウがきっとそこにある。実に扱いやすい。そうか、トランプは、ある意味カードの究極の形なのだ!

 で、その“究極”のカードに筆者は、「出金請求」とか「デジカメ写真バックアップ」とか「iPod充電」「コピー用紙補充チェック」とかいう日常のどうしようもなく些細な項目を油性ペンで書き込んでいく。

 筆者が作っている束は今のところ3種類。

種類 内容
1 毎日のルーティーンワーク  毎日一度はチェックしなくてはならないことや、しなければならないことなどを項目ごとにカードにしている。これを朝、左のポケットに全部入れ、通勤などの移動時や、ちょっと手が空いたときに時々取り出して繰りながら確認する。済んだものや今日は必要のないものは右のポケットに入れる。こうして左のポケットが空になるようにする。意外に耐久性が高いので、ケースに入れずにポケットに放り込んでおいても割と大丈夫。最悪折れ曲がったときは、書き直すぐらいの感じでいい。家を出る際の持ち物や電源などのチェック項目などもこれに入る。
2 現在関わっている仕事(筆者の場合は商品など)のタイトル  平行していろんな仕事をしていると、どうしても進行のチェックなど忘れがちになるものができてしまう。現在アクティブな案件(取引先などでもいいだろう)を毎日チェックし、今日処理すべきことを確認する。これは会社のデスクの引き出しに入れてある。最近、あまり動いていない案件でもとりあえず項目だけは毎日見ることになる。今日、処理しないものはどんどん山から外していく。

 やる気のでないときは、シャッフルして裏向きに積み上げ、1枚めくって出た仕事に着手する(笑)。
3 便利なチェックリストや格言集  ◯◯の3カ条とか、◯◯チェック5項目みたいなヤツだ。「リストのチカラ」で取り上げられているようなこの手のリストは身に付くまでは頻繁にチェックした方がいい。本を読んでいて面白いと思ったフレームワークは、このカードに書いておいて、チェックすることにしている。仕事の上で必要な「提出書類一覧」や「カタログ撮影でのチェック項目一覧」など、何度も使用するものもこれに当たるし、感銘を受けた格言のようなものも一緒にしておいて、時々目に触れるようにしている。とにかく何度も見返したいものはこのカードに書いておく。

入手方法は?

赤と青の2種類

 このカードは特殊用途用なので、普通のお店では入手が難しい。最初は上野のヤマシロヤのマジックグッズコーナーに行って見つけたのだが、その後入荷が滞っているようで、入手できなくなってしまった。いろいろとネットで探したところ、カード類の専門ショップ「銀河企画」を発見。ここなら通販で購入できる

 裏面は赤と青の2種類があり、使い分けることも可能だ。両面白のカード「ダブルブランク」もある。1枚当たりの単価が約20円と高いこと、油性マーカーで書かなくてはならない(つまり消せない)ことがネックで、最初はかなりドキドキして躊躇する。しかし、使用頻度が高いからこそ丈夫なカードを使うのだ。ここは思い切って書き込んでしまおう。20枚も書くとフッ切れる。贅沢といえば贅沢だが、ケータイやPDAのToDoリストにはない楽しさがあって筆者はかなり好きだ。

 購入には送料や振込手数料がかかるし、残量が少ないと不安になるので、多少のまとめ買いをオススメする。筆者は5箱単位で購入。残り少なくなってきたので追加の5箱を購入したが、まだ最初の5箱を使い切っていない。


名刺入れにも入るが、普通の名刺よりも大きいので注意

 3の用途で利用する時の持ち運びには、たくさん入る名刺入れを使用しているが、普通の名刺よりも大きいので注意が必要。同様に、使わなくなったカードでも、また使う可能性があるものは、名刺ボックスに、名刺と一緒に保管している。名刺ボックスを買う際にもサイズには注意が必要だ。

 万能カードなので、例えば1個だけ「当たり」を作っておいて、掃除当番や買い出し係を決めるのに使うとか、会社の近所の食事処を書いておいて「今日の昼ご飯を決める」のにも使える。主婦なら、夕飯のメニューを決めるためのリストなどにも使えるかもしれない。

著者紹介 高畑正幸(たかばたけ・まさゆき)

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 1974年、香川県生まれ。図画工作と理科が得意な小学生を20年続けて今に至る。TVチャンピオン「全国文房具通選手権」で3連覇中の文具王。現在は文具メーカーに勤務、文房具の企画開発を行っている。2006年「究極の文房具カタログ」上梓。文具サイト「TOWER-STATIONERY」を主催。


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