インタビュー
» 2008年05月16日 15時00分 UPDATE

ひとりで作るネットサービス:誰もが簡単に作れるアプリを目指したい――サーバなしで使える「Afrous」冨田慎一さん (1/3)

国が推進する未踏ソフトウェア創造事業でも採択された、ブラウザだけでデータがマッシュアップできる「Afrous(アフロス)」を作った冨田さん。信条にしている「誰もが簡単に作れること」の真意とは?

[田口元,ITmedia]

 ひとりでつくるネットサービス第27回は、ブラウザだけでさまざまなデータをマッシュアップできるツール「Afrous(アフロス)」を作った冨田慎一さん(32)にお話を伺った。「情報利用をみんなの手に」を目指し、ユーザーが簡単にデータを活用できるツールを作りたいという冨田さん。単身米国に渡り、シリコンバレーも視察してきた冨田さんが見ている世界とはどういったものだろうか。

「誰だ、これを作ったのは?」――独立決意後に作ったデモがトップの目にとまる

 「誰だ、これを作ったのは?」。大手CRMベンダー、セールスフォース・ドットコムの全社員に向けて一通のメールが飛んだ。送ったのは同社のCEO、マーク・ベニオフ氏。セールスフォースのプラットフォームを使って作られた、あるデモの完成度の高さに驚いたからだった。

 そのデモではブラウザ上にWindowsによく似たOSを再現し、そこから自由にセールスフォースのデータにアクセスすることができた。ビジュアル的なインパクトもさることながら、「うちの製品を使ってこういうこともできたのか!」という可能性をCEO自らに気付かせたことが大きかった。

 作ったのは、最初の就職先・日本オラクルからセールスフォースに転職して1年足らずの冨田さんだった。開発者向けのリレーションを担当する部署にいた彼が、あるイベントでのデモに使うために2週間ほどで作り込んだものだ。ただ、CEOのマーク氏がこのデモを見つけたころには、冨田さんはすでに独立の決意を固めていた。「やりたいことがある。自分で突き進んでみたい」。なんとか冨田氏を慰留しようとする同社を振り切り、2008年1月に彼は自らの会社、マッシュマトリックスを興した。

IT業界の大きなうねりを実感――最初の就職先からの転職を決意する

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 冨田さんは愛知県出身。大学に入るまでは特にコンピュータに興味があったわけではなかった。部活は剣道部。「普通にゲームぐらいはしていましたが……特に変わったことはしていませんでしたね」。学生時代をそう振り返る。

 初めてコンピュータを持ったのは東京の大学に入ってから。なんとなくコンピュータグラフィックスに興味があった冨田さんは、Macintoshを購入した。プログラミングに特に興味があったわけではなかったが、付属していたハイパーカードにはまった。「(ハイパーカードは)単純なプログラミングツールなのですが、コードを書けばいろいろできることが分かりました。それで3Dのグラフィックスを描画するプログラムなんかを書いていましたね」

 コンピュータに出会うまでは数学に興味があった冨田さんは、このころから情報系の研究に興味を持ち始めた。研究室もグラフィックス系の学科に進んだ。ただ、「周りには昔からプログラミングをやっているすごい人ばっかり」。周りに付いていけない自分にはがゆい思いをしつつも、研究が進むにつれ「グラフィックだけで食べていくのは難しそうだ……」とも感じるようになる。

 もっと社会を見て人の役に立つことをしたい――そう考えた冨田さんが就職先に選んだのは日本オラクルだった。エンジニアとして過ごす日々の中で、ビジネスの現場で役に立っている、という実感を得ることはできた。しかしオラクルのビジネスに疑問を感じ始めたのもこのころだった。「オラクルは良くも悪くもデータベースありき。プロダクトを売るための企画は歓迎されますが、当時話題になり始めていたインターネット系のプロジェクトが立ち上げるような土壌はありませんでした」

 IBM、サン、マイクロソフト――IT業界をリードしてきたと言われていた企業がじわじわと勢いを失ってきたように感じていた。GoogleやAmazonといったインターネット企業が勢いを増し、Six Apartのような小さなベンチャーが業界の規格を作るようになってきていた。「だんだんと会社の外で起きていることから学ぶことが多くなってきていました」。ゲームのルールが変わってきている……そう感じた冨田さんは思い切って6年間勤め上げたオラクルを退社する決意をする。

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