最近のこどもの知育玩具は実によくできていて、カラフルで楽しく、仕組みは単純、組み合わせ次第で多様なフォルムを作れる。世の中に、いくつも知育玩具があるなかで、特に「手先に微妙な刺激を受ける工夫を持った」3つのアイテムを紹介したい。
製品名 | 価格 | 発売元 |
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LaQ フリースタイルPALLET | 7350円 | ヨシリツ |
LaQは、パーツを組み合わせて遊ぶ知育玩具だ。パーツのサイズは2センチ前後で、写真のように赤、黄、緑と実にカラフル。四角や三角の「面パーツ」と、それらを平面的につなげたり、曲げてつなげたりするための「つなぎパーツ」がある。これらを合わせてぐっと押しこめば、気持ちよく「パチッ」とつながる。外す時は、接合部を折るようにすればいい。この時の「プキッ」とした感触も気持ちいい。
シンプルなパーツをただランダムに組み合わせるだけでも、なにか造形の妙といった形が出てくることもある。目的なく組み立てて、手の刺激を楽しむ。アイデアが出てきたらそこでやめる。手先を動かすことは腕組みしているよりも、ずっといいことが、実際やってみると実感できるはずだ。
各パーツは小さく、大量にあるので、小ぶりなボールやグラスに入れて中央に置き、テーブルを必要以上に占拠しないよう工夫したい。なお、交流スペースに置いておく時は「ご自由にお取り下さい」とラベルを張っておくといい。結構なくなるかもしれないが、社員の知的な生産性が上がると思えば安いものだ。ボールペンのカチカチをやめられない人にも使ってもらうといいかもしれない。なお、これはこのあとに紹介する2つのアイテムと異なり幼児専用というわけではなく、大人も対象にした商品である。
製品名 | 価格 | 発売元 |
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ピタゴラス「プレート」 | 1万2000円 | ピープル |
ピタゴラスには、写真のような色とりどりの四角や三角のプレートが数十枚入っている。それぞれのサイズは1辺が5〜8センチくらい。そのプレートの中に特殊な構造の磁石が入っていて、適当に置いてもきれいにつながるよう“ぐりん”と磁力でくっつくようになっている。3次元的なものを作ることも簡単だ。
写真は、筆者が別に買ってきた “はがせるラベル”をプレートに張って、PEST分析(企業を取り巻く4つの環境)をたわむれに書きこんだもの。新事業を考えるブレストの時に、思考フレームワークを、このプレートに書きこんで、眺めてみたり、組み替えてみたり、箱状に組み立ててみると、発想が広がることがある。アイデアを説明してみる際にもそのプレートが使える。
マグネットなのでホワイトボードにそのまま思考フレームワークを表すのに使ってもいい。こうしたものをいくつか使って作っておくと、会議の時に、分析のフレームワークとしてプレートをパタンパタンと張るだけでいいので便利。元々は玩具だから、遊び心もある。
製品名 | 価格 | 発売元 |
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IQLIP きほんセット1 | 2415円 | コクヨS&T |
IQLIPは、長さ3〜5センチ程度の洗濯バサミに似たクリップ。手になじみやすい丸みを持たせている。子供のころ、洗濯バサミをつなげて遊んだ方も多いと思うが、これは、そういう遊びができるアイテムである。クリップをブロックに見立てれば、「連結部の自由度の高いブロック」とも言えるだろう。
何にも気にしないで、はさんでつなげていってもいいし、しっかりかみ合わせるとちゃんと固定できる。写真のように小さな突起群があるため、かみ合わせた状態で位置を変えると「カチッ、カチッ」としたやや強めのクリック感。これが心地いい。たったこれだけのことだけれども、手遊びしながら考え事をするのにとても適している。
写真は、筆者がたわむれに作ったもの。腕輪と謎の虫。パーツには、タイヤと目玉とL字パーツがあるので、当たり前だがただの洗濯バサミよりも、表現できる幅が広い。
以上、3つのアイテムを紹介した。なおそのほかにも、遊び心を刺激する玩具としては、なつかしい「モール(毛のついた針金)」や「(普通の油粘土ではなく)紙粘土」があげられる。これらは、上記のネガティブ要因のいくつかに抵触する面もあるが、その場でさっと、空間イメージを具現化してみせて、「こんなの、どう?」ということを説明するには非常に有効だ。どちらも100円ショップで手に入るのも魅力的である。
なお、買わなくても手に入る場合がある。あなたの回りに、来年お子さんが小学校にあがるという方がいたら「不要になった知育玩具はありませんか?」と聞いてみてほしい。思い出があるので壊れない限りは親はとっておきたがるものだが、大事に使うと約束すれば案外譲ってくれるかもしれない。スマートで丈夫な知育玩具は残っていることが結構あるのだ。
ブレストに遊び心を醸す3つのアイテムは、ブレストのルールで最も効果をもつ「判断遅延(批判禁止)」が共有されているチームならば、発想の多様性をより引き出すことに役立つはずだ。ぜひ試してほしい。
このほかにもレゴなどのブロック系玩具は世の中に結構ある。ところが、ある商品と別の会社の商品は、当然ながらつながらない。インタフェース(組み合わせる凹凸形状)が違うからだ。この隙間を埋める「なんでもつながりますパーツ」を開発・製造したら、大きなブロックマーケットの傍流市場をつかむことができるのかもしれない。商品ごとの違いを意識せずに使えたら、面白いだろう。もちろん、懸念事項としては、意匠問題が予想され、それはうまく乗り越える必要はあるのだが。
事業のアイデア創造支援や技術開発をサポートする事業化コーディネーター。仙台のベンチャー企業デュナミスが事務局を務める創造性育成ツール開発プロジェクトでは、プロジェクトリーダーを務めた。このプロジェクトで誕生した新商品が「ブレスター」である。みやぎものづくり大賞(2007)で優秀賞を受賞。社会人院生として、東北大の博士課程にも在籍、新事業創造マネジメントや創造工学を研究。Webサイトは「石井力重の活動報告」。
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