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» 2008年07月04日 09時06分 UPDATE

カーボンオフセットのカラクリ:疑問1 カーボンオフセットは“免罪符”?

最近よく耳にする言葉、カーボンオフセット。よそで減らしたCO2分を買い取ることで、自分が削減したとみなす“エコ”な制度らしい。「みなす」にモヤモヤを感じた筆者は、早速カーボンオフセットのカラクリを解くことに。全8回の予定。果たしてモヤモヤは晴れるか――。

[豊島美幸,ITmedia]
mt_aulait.jpg 7月1日からローソンで限定販売中のカーボンオフセット付きキャンペーン商品「GEORGIA グリーンプラネット カフェオレ」を購入。購入1本ごとに1キログラムCO2を減らしたことになるという

 エコが熱狂的に叫ばれる中、「カーボンオフセット」という新しい考え方がにわかに台頭してきた。途上国などで削減したCO2量を先進国の企業などが権利として買い取り、買い取っただけCO2を減らせたとみなし、地球規模でCO2をオフセット(相殺)する――というものらしい。

 「みなす」と言われても腑に落ちなかった筆者は、このモヤモヤ感を解決すべくカーボンオフセットについて調べることに。すると疑問が疑問を呼ぶ謎解きへと発展。カーボンオフセット商品を扱う企業の人やプロバイダー、大学教授、公的機関等、カーボンオフセットにかかわる8人の方々にお付き合いいただくことになった。

 法人などにカーボンオフセットを売ったり各種手続き代行などを行うプロバイダー企業、リサイクルワンが6月上旬に都内で開催した「カーボンオフセットセミナー」の内容も交え、8つの疑問を紐解いてみたい。モヤモヤはスッキリするか――。


「おカネの力でCO2削減」はアリ?

 カーボンオフセットとは、先進国の企業などが、途上国の植林や自然エネルギー発電など、国連が認めたCO2削減プロジェクトにおカネを投入。途上国のCO2排出量を減らす支援をする。そしてプロジェクトによって実際にCO2削減できた「CO2排出枠」を「CO2排出権」として買い取る。さらに、買い取った「CO2排出権」を自国の政府に寄付すれば、自国がCO2を削減したことにできる国際ルールだ。

 つまりおカネの力で、ほかの場所での成果を「自分たちの成果です」と公言できるのがカーボンオフセット。とはいえ、実際に自分の土地でCO2を減らせていないことには変わりない。みんなで一緒に掃除する中、おカネを出してやらずに済ませてしまう人のような、卑怯なイメージがつきまとうのだが……。


21世紀型免罪符、でも行動しないよりマシ

mt_as.jpgmt_bil.jpg 「カーボンオフセットセミナー」で講師を務める明日香壽川教授(左)とビル・スネイド氏(右)

 東北大学で環境問題などを研究する明日香壽川(あすか・じゅせん)教授は、そんなカーボンオフセットの概念を、十字軍に参加しなかったときに、参加したとみなした中世の「免罪符」に例える。

 1997年、世界で初めてカーボンオフセットを商品として販売したイギリスのプロバイダー企業、カーボンニュートラルのビル・スネイド氏も免罪符の例えに賛同。さらに「たとえ他地域であれ、実際にCO2削減というアクションが起きている」点が十字軍の免罪符と違うと付け加える。

 カーボンオフセットは、それだけではCO2による温暖化問題を100%解決できないかもしれないが、一部なら解決できる。「たとえ免罪符でも、何もアクションを起こさないよりはマシ。開き直ってしまおう」(明日香教授)というわけだ。


報われない理不尽な制度?

 一方、中部大学で環境問題などを研究する武田邦彦(たけだ・くにひこ)教授は違う視点でカーボンオフセットをとらえている。

 そもそも企業は自分たちの努力でモノを生産し、社会貢献している。にもかかわらず、社会貢献している側が、モノを生産せず社会貢献しない側におカネを払うのは、一生懸命勉強して高得点を取った人がほめられず、勉強しないで悪い点取った人がほめられる理不尽さと同じだという。カーボンオフセットの概念は、企業が報われない「不公平な制度」だと主張する。

 以上より1つ目の答えはこうだ。

疑問1への回答

  • カーボンオフセットは21世紀の免罪符。
  • たとえ免罪符であっても何もやらないよりマシ。開き直ればいい。
  • カーボンオフセットの在り方自体を問う考え方もある。

“低炭素力”は国際競争力

mt_ko.jpgmt_ta.jpg 児玉千洋氏(左)と武田邦彦教授(右)

 さて、先述の通り、カーボンオフセットは1997年にイギリスで産声をあげた。歴史は浅く、CO2削減にどれほどの効果があるのかは未知数だ。

 とはいえ、消費者の意識がエコ、特にCO2に向く中、企業は低炭素化に取り組まなければ国際的に評価されない。逆に言えば、低炭素化するほどビジネスチャンスが広がる。

 環境分析を行う企業、エコテストの児玉千洋(こだま・ちひろ)氏はこれを“低炭素力”と呼び、「低炭素力は国際競争力」と断言している。

 その効果はともかく、おカネで低炭素力を手っ取り早く上げることができるカーボンオフセット。企業の関心が高まってきた。

「疑問2」へ続く――。
疑問を解く8人の回答者(五十音順)
名前(敬称略) 所属等 カーボンオフセットとのかかわり等 関連Webサイト
秋山大(あきやま・だい) 凸版印刷
パッケージ事業本部
ITソリューション部
Web懸賞キャンペーンを展開 カーボンオフセット・Web懸賞キャンペーンサービスのリリース
明日香壽川(あすか・じゅせん) 東北大学
環境科学研究所教授
環境問題等の研究ほか 地球温暖化問題懐疑論へのコメント
岡田俊二(おかだ・しゅんじ) 近畿日本ツーリスト
団体旅行事業本部カンパニー
教育旅行課長
カーボンオフセット教育旅行の提案ほか カーボンオフセット旅行のリリース
興津世禄(おきつ・せいろく) リサイクルワン
環境コンサルティング事業部
マネージャー
カーボンオフセット事業のプロバイダー リサイクルワン
児玉千洋(こだま・ちひろ) エコテスト
代表取締役
環境分析ほか エコテスト
武田邦彦(たけだ・くにひこ) 中部大学
総合工学研究所副所長
工学博士
環境問題等の研究ほか 武田邦彦(公式サイト)
ビル・スネイド カーボンニュートラル
(イギリスの企業)
取締役
世界初のカーボンオフセット事業のプロバイダー カーボンニュートラル
安田將人(やすだ・まさと) 環境省地球環境局
地球温暖化対策課
市場メカニズム室
排出量取引係長
CO2排出の整備ほか 2006年度の温室効果ガス排出量について

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