連載
» 2008年07月08日 13時34分 UPDATE

カーボンオフセットのカラクリ:疑問3 温暖化してる、それともしてない?――同じデータから2つの見解のなぜ

カーボンオフセットは、温暖化を食い止めるため地球規模でCO2を相殺しようとする、新しい考え方だ。でもそもそも、本当に地球は温暖化してるのか、温暖化はそんなに悪いことなのか――。素朴な疑問を調べてみると、同じデータから2つの見解が生まれたことが分かった。

[豊島美幸,ITmedia]

カーボンオフセットとは?

 先進国の企業や国が、途上国などで削減したCO2量を権利として買い取り、買い取っただけCO2を減らせたとみなすことで、地球規模でCO2をオフセット(相殺)する国際ルール。疑問1参照。


 2008年に入り、企業がにわかにカーボンオフセットに注目しはじめた。カーボンオフセットを行えば、地球温暖化の“主犯”と目されるCO2を減らせるからだ。

 だがこのことは、地球が温暖化していることが大前提の話。そもそも地球は本当に温暖化しているのだろうか――。筆者の脳裏に、ふとそんな素朴な疑問がわき起こった。

温暖化は悪いことだらけ、人が地球に住みづらくなる

 温暖化といえば、南極の氷が溶け、水害が増え、南の島が沈み……といった絶望的なイメージを抱く人も少なくないだろう。「人為起源のCO2で確実に温暖化している」とする東北大学の明日香壽川教授は、このイメージを正しいとする立場だ。

 つまり温暖化が進むと、海面上昇や砂漠化が起こり、人が地球に住みづらくなる。また、急激な気候変動に、これまでの生活習慣や体質などが適応しきれなくなるというのだ。

 明日香教授の主張は、気候変動研究の世界最高クラスの機関IPCC(INTERNATIONAL PANEL ON CLIMATE CHANGEの略で、「気候変動に関する政府間パネル」のこと)や、大学などの観測データなどに基づいている。

温暖化に恩恵あり、「寒さが死因」の人が減る

 一方、中部大学の武田邦彦教授は、温暖化自体と、温暖化が悪影響を及ぼすという見解に懐疑的だ。温暖化を疑う裏づけには、やはりIPCCのデータを挙げている。

 また仮に、温暖化して気温が高くなっているとしても、高緯度では寒さが緩和し、寒さにより死亡する人が減って過ごしやすくなる。地域にもよるが日本は作物が今より収穫でき、住みやすくなるメリットにも目を向けるべきだと主張する。

優勢な仮説は、温暖化肯定説

 「人に悪影響を及ぼす温暖化が進行している」とする温暖化肯定説と、「温暖化は人に悪影響を与えず、温暖化自体が進行しているとは限らない」とする温暖化懐疑説。果たしてどちらが正しいのか。

 調べると、ほかにも温暖化やその影響について肯定否定、さまざまな立場の仮説があることが分かってきた。出所はやはり、IPCCだ。IPCCが発表したデータによると、日本の平均気温は20世紀の100年間で1度上昇している。これは産業革命以前はあり得ないハイピッチで人為的なもの、とする見解が圧倒的に優勢のようだ。

数十億の地球の営みを知るには、20年間の研究では限界あり

 環境省の安田將人氏は、「IPCCのデータが、人為的なCO2による地球温暖化をほぼ確実に検証している」と温暖化説を肯定しながらも、「世界中の研究者たちの科学的知見を集めても、やはり解明できないものもある」と、認識している。

 さて、当記事内で頻出しているIPCC。この機関は現在、環境問題の専門家などが、気候変動に関する最も信用できるデータの出所として認識している。ただその設立は1988年。研究期間は20年間にすぎない。

 数十億の地球の営みに比べると、一瞬である20年間の研究から分かる範囲には限界があるだろう。だからこそ、解釈や仮説などに食い違いが出てきてしまうのかもしれない。

有力説、温暖化を遅らせるためにCO2削減を

 とはいえ、現時点では明日香教授らが唱える温暖化肯定説が優勢だ。地球や人に悪影響を及ぼす温暖化は「人為起源のCO2で確実に起こっている」のだから、悪影響を食い止めるには人為起源のCO2は当然削減する必要性がある――という。

 また、リサイクルワンの興津世禄氏によれば、これ以上温暖化すると、環境破壊に歯止めがかからなくなるとされる、後戻りできない地点がいずれ訪れる。今人類にできることは、到達するまでの期間を「CO2削減によってなるべく遅らせる」ことだという。

 以上から疑問3への答えはこうだ。

疑問3への回答

  • 「人に悪影響を及ぼす温暖化が進行中」とする温暖化肯定説と、「温暖化は人に悪影響を与えず、温暖化自体が進行しているとは限らない」とする温暖化懐疑説など、温暖化への仮説は諸説あり。
  • 諸説は、同じIPCCのデータから生まれた。
  • 2008年7月現在、優勢なのは温暖化肯定説。
  • 温暖化肯定説では、温暖化を遅らせるためにはCO2を削減すべき、としている。

 いずれにしても、IPCCの研究データを元にした諸説のうち、人為的なCO2排出によって地球は温暖化している――という“常識”を前提に、CO2削減策のカーボンオフセットが生まれた。

「疑問4」へ続く――。
mt_as.jpgmt_ok.jpg

mt_ta.jpgmt_ya.jpg 上段は明日香壽川教授(左)、興津世禄氏(右)。下段は武田邦彦教授(左)、安田將人氏(右)

疑問を解く8人の回答者(五十音順)
名前(敬称略) 所属等 カーボンオフセットとのかかわり等 関連Webサイト
秋山大(あきやま・だい) 凸版印刷
パッケージ事業本部
ITソリューション部
Web懸賞キャンペーンを展開 カーボンオフセット・Web懸賞キャンペーンサービスのリリース
明日香壽川(あすか・じゅせん) 東北大学
環境科学研究所教授
環境問題等の研究ほか 地球温暖化問題懐疑論へのコメント
岡田俊二(おかだ・しゅんじ) 近畿日本ツーリスト
団体旅行事業本部カンパニー
教育旅行課長
カーボンオフセット教育旅行の提案ほか カーボンオフセット旅行のリリース
興津世禄(おきつ・せいろく) リサイクルワン
環境コンサルティング事業部
マネージャー
カーボンオフセット事業のプロバイダー リサイクルワン
児玉千洋(こだま・ちひろ) エコテスト
代表取締役
環境分析ほか エコテスト
武田邦彦(たけだ・くにひこ) 中部大学
総合工学研究所副所長
工学博士
環境問題等の研究ほか 武田邦彦(公式サイト)
ビル・スネイド カーボンニュートラル
(イギリスの企業)
取締役
世界初のカーボンオフセット事業のプロバイダー カーボンニュートラル
安田將人(やすだ・まさと) 環境省地球環境局
地球温暖化対策課
市場メカニズム室
排出量取引係長
CO2排出の整備ほか 2006年度の温室効果ガス排出量について

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

ピックアップコンテンツ

- PR -

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -