有力仮説、地球温暖化の元凶として、いつも矢面に立たされるのがCO2だ。でも確か、温暖化ガスはほかにもあったはず……。「CO2主犯説」はどこから来たのだろう。
先進国の企業や国が、途上国などで削減したCO2量を権利として買い取り、買い取っただけCO2を減らせたとみなすことで、地球規模でCO2をオフセット(相殺)する国際ルール。疑問1参照。
疑問2で取り上げたように、企業がカーボンオフセットを取り入れるのは、最終的にはブランディングのため。背景に「エコ=CO2削減=いいこと」という共通認識がある。
中部大学の武田教授は、かつて報道をにぎわせたフロンガスについて「オゾン層を破壊する原因として、かつてマスコミが騒ぎ立てたのに、今は見向きもしない」という。温暖化の原因と見られるガスはフロンガスのほかにも、牛のゲップ成分で知られるメタンガスなど、CO2を合わせて6種類もあるのだ。
にもかかわらず、なぜCO2ばかりが温暖化対策の対象にされてしまうのか。カラクリは3つあるようだ。
1つ目は換算方法にある。「京都議定書のいう6%というのは、なにもCO2だけのことではない」(環境省・安田將人氏)。「正確にはCO2に換算した場合の数字」だ。例えばメタンは、同じ量ならCO2より21倍の温室効果があることが分かっている。
だから、メタン1グラムはCO2の21グラム分に匹敵する。そこでメタンを1グラム減らしたら、CO2を21グラム減らしたこととして計算。同じようにほかのガスもCO2換算していく。こうして対象となる温室効果ガスすべてをCO2で数値化するのだ。議定書で決まっている「CO2の削減目標」は、実は「CO2換算にした削減目標」というわけだ。
2つ目は、「実際に温室効果はCO2が圧倒的に多い」(環境省・安田將人氏)から。環境省がUNFCCC(「United Nations Framework Convention on Climate Change」の略、「国連気候変動枠組条約」のこと)の事務局に提出した表データを見てみよう。
安田氏によると、これらの表は、「すべてCO2換算した上で、どれだけ温室効果をもたらしたかを表したもの」。ここから2つのことが分かる。1つは、温暖化の95%はCO2によるということ。もう1つは、その割合が2008年現在、京都議定書の基準となる1990年より増えていること。
この事実からCO2だけ取り上げられがちになるのだ。
3つ目は、6種の温室効果ガスのうち、「CO2くらいしか、日常生活に密接に関係したものはないから」(安田氏)だ。確かにメタンやフロンは、個人が日常生活で努力して減らせるものではない。交通手段、省エネ生活など、減らせるものはCO2がらみのものばかり。
だから環境省やマスコミなどが国民に温暖化対策を訴えるとき、自然と「CO2を減らしましょう」という呼びかけになるのだという。
以上より、疑問4への回答はこうだ。
温室効果ガスは6種類あるが、3つの理由からCO2ばかりヤリ玉にされがち。
(1)議定書のCO2削減目標は、すべての温室効果ガスをCO2換算した数値。
(2)9割以上の温室効果をもたらしているのはCO2。
(3)日常生活で減らせそうなのはCO2だけ。そのため環境省などは、「CO2を減らしましょう」と呼びかけることに。
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