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» 2008年07月09日 08時30分 UPDATE

カーボンオフセットのカラクリ:疑問4 ほかの温暖化ガスはどこへ? CO2を削減する3つの理由

有力仮説、地球温暖化の元凶として、いつも矢面に立たされるのがCO2だ。でも確か、温暖化ガスはほかにもあったはず……。「CO2主犯説」はどこから来たのだろう。

[豊島美幸,ITmedia]

カーボンオフセットとは?

 先進国の企業や国が、途上国などで削減したCO2量を権利として買い取り、買い取っただけCO2を減らせたとみなすことで、地球規模でCO2をオフセット(相殺)する国際ルール。疑問1参照。


 疑問2で取り上げたように、企業がカーボンオフセットを取り入れるのは、最終的にはブランディングのため。背景に「エコ=CO2削減=いいこと」という共通認識がある。

CO2以外にも、温室効果ガスは6種類あり

 中部大学の武田教授は、かつて報道をにぎわせたフロンガスについて「オゾン層を破壊する原因として、かつてマスコミが騒ぎ立てたのに、今は見向きもしない」という。温暖化の原因と見られるガスはフロンガスのほかにも、牛のゲップ成分で知られるメタンガスなど、CO2を合わせて6種類もあるのだ。

 にもかかわらず、なぜCO2ばかりが温暖化対策の対象にされてしまうのか。カラクリは3つあるようだ。

どの温室効果ガスもCO2に換算

 1つ目は換算方法にある。「京都議定書のいう6%というのは、なにもCO2だけのことではない」(環境省・安田將人氏)。「正確にはCO2に換算した場合の数字」だ。例えばメタンは、同じ量ならCO2より21倍の温室効果があることが分かっている。

 だから、メタン1グラムはCO2の21グラム分に匹敵する。そこでメタンを1グラム減らしたら、CO2を21グラム減らしたこととして計算。同じようにほかのガスもCO2換算していく。こうして対象となる温室効果ガスすべてをCO2で数値化するのだ。議定書で決まっている「CO2の削減目標」は、実は「CO2換算にした削減目標」というわけだ。

温室効果はCO2が圧倒的に多い

 2つ目は、「実際に温室効果はCO2が圧倒的に多い」(環境省・安田將人氏)から。環境省がUNFCCC(「United Nations Framework Convention on Climate Change」の略、「国連気候変動枠組条約」のこと)の事務局に提出した表データを見てみよう。

mt_fccc1.jpg 環境省が日本の温室効果ガスの内訳。左が議定書の基準となる1990年の、右が2005年の内訳。青色部分がCO2を表す ※出典:GHG emission profiles for Annex I Parties(UNFCCC)
mt_fccc2.jpg 環境省が日本の温室効果ガスの内訳の推移。緑線が全体の、ピンク線がCO2の排出量を表す ※出典:GHG emission profiles for Annex I Parties(UNFCCC)

 安田氏によると、これらの表は、「すべてCO2換算した上で、どれだけ温室効果をもたらしたかを表したもの」。ここから2つのことが分かる。1つは、温暖化の95%はCO2によるということ。もう1つは、その割合が2008年現在、京都議定書の基準となる1990年より増えていること。

 この事実からCO2だけ取り上げられがちになるのだ。

日常生活で、努めて減らせるのはCO2だけ

 3つ目は、6種の温室効果ガスのうち、「CO2くらいしか、日常生活に密接に関係したものはないから」(安田氏)だ。確かにメタンやフロンは、個人が日常生活で努力して減らせるものではない。交通手段、省エネ生活など、減らせるものはCO2がらみのものばかり。

 だから環境省やマスコミなどが国民に温暖化対策を訴えるとき、自然と「CO2を減らしましょう」という呼びかけになるのだという。

 以上より、疑問4への回答はこうだ。

疑問4への回答

温室効果ガスは6種類あるが、3つの理由からCO2ばかりヤリ玉にされがち。

(1)議定書のCO2削減目標は、すべての温室効果ガスをCO2換算した数値。

(2)9割以上の温室効果をもたらしているのはCO2。

(3)日常生活で減らせそうなのはCO2だけ。そのため環境省などは、「CO2を減らしましょう」と呼びかけることに。


※「疑問5」へ続く――。
mt_ta.jpgmt_ya.jpg 武田邦彦教授(左)、安田將人氏(右)

疑問を解く8人の回答者(五十音順)
名前(敬称略) 所属等 カーボンオフセットとのかかわり等 関連Webサイト
秋山大(あきやま・だい) 凸版印刷
パッケージ事業本部
ITソリューション部
Web懸賞キャンペーンを展開 カーボンオフセット・Web懸賞キャンペーンサービスのリリース
明日香壽川(あすか・じゅせん) 東北大学
環境科学研究所教授
環境問題等の研究ほか 地球温暖化問題懐疑論へのコメント
岡田俊二(おかだ・しゅんじ) 近畿日本ツーリスト
団体旅行事業本部カンパニー
教育旅行課長
カーボンオフセット教育旅行の提案ほか カーボンオフセット旅行のリリース
興津世禄(おきつ・せいろく) リサイクルワン
環境コンサルティング事業部
マネージャー
カーボンオフセット事業のプロバイダー リサイクルワン
児玉千洋(こだま・ちひろ) エコテスト
代表取締役
環境分析ほか エコテスト
武田邦彦(たけだ・くにひこ) 中部大学
総合工学研究所副所長
工学博士
環境問題等の研究ほか 武田邦彦(公式サイト)
ビル・スネイド カーボンニュートラル
(イギリスの企業)
取締役
世界初のカーボンオフセット事業のプロバイダー カーボンニュートラル
安田將人(やすだ・まさと) 環境省地球環境局
地球温暖化対策課
市場メカニズム室
排出量取引係長
CO2排出の整備ほか 2006年度の温室効果ガス排出量について

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