生活に密着すれば使ってもらえる――ガソリン価格比較サイト「gogo.gs」小川さんひとりで作るネットサービス(1/2 ページ)

ガソリンスタンドを見つけてはボイスレコーダーに価格を吹き込む。休日はそうしてガソリン価格情報を足で稼いだ小川さん。立ち上げたガソリン価格比較サイト「gogo.gs」は価格高騰と同時にアクセスが急増し、サイト管理に徹するため脱サラした。そんな小川さんのフットワークを支えるものとは?

» 2008年08月26日 12時57分 公開
[田口元,ITmedia]

 ひとりで作るネットサービス第31回は、全国のガソリン価格を比較できるサイト、「gogo.gs(ゴーゴージーエス)」を作り上げた小川智史(おがわ・のりふみ、37歳)さんに話を聞いた。会社勤めをしながらコツコツと作り始めたサイトが25万人を超えるユーザーを獲得し、テレビ取材を受ける社会の注目を集めた経緯とはどういったものだったのだろうか。

「gogo.gs」の画面

まずは自分がバイクで……価格情報をコツコツ足で稼ぐ

 「最初はやっぱりデータがないと格好がつかないですよね。だから休日を使って自分でデータを集めまくりました」。2004年の秋、ガソリン価格比較サイト「gogo.gs」を立ち上げた時の思い出を、小川さんはこう話す。ガソリン価格がネットで分かれば便利なはず……。そう信じて立ち上げてみたサイトだったが、当然最初はデータがなかった。

 「バイクにボイスレコーダーをくくりつけて、1日10〜12時間は走りまくりました。帰宅してからも2〜3時間はデータ入力をしていたので、休日はそれでつぶれてました」。バイクで走りながら、ガソリンスタンドを見つけるたびに、レコーダーのマイクに向かってガソリンの価格をしゃべり続けた。帰宅してからは地図とにらみ合いながら「あ、このデータはここのガソリンスタンドだな」と当たりをつけて1つ1つ丁寧にデータ入力をしていった。

 「でも当時はそんなに大変だと思っていませんでしたね」と言う小川さん。ネットの向こう側から返ってくる反応が、小川さんの高いモチベーションになっていた。「本当に、すごくちょっとずつですが、アクセスが増えたり、会員登録してもらったり、そうしたことがとにかくうれしかったのです」

 また、当時会社勤めをしていた小川さんにとって、「gogo.gs」の運営は仕事にも良い影響を与えていた。「そのころ勤めていた会社では、インターネットの技術を使ってシステム構築をしていました。gogo.gsで学んだことを仕事に生かしたり、逆に仕事で学んだことをgogo.gsに活用することができたのです」

 Ajaxなどの新しい技術が気になったら、すぐに自分のサイトで試してみた。その経験があったので、職場での自分の発言にも自信が持てた。技術だけでなく、どうしたら登録会員を増やせるのか、メルマガはどう発行すべきか、といったコミュニティ運営の勘所まで話せるようになっていた。

ガソリン価格高騰でアクセス急増、サーバもダウン

 このように仕事の合間にコツコツと1人で作り上げてきたサイトだったが、昨今のガソリン価格高騰によってアクセスが急増しはじめた。ガソリン価格比較サイトはほかにあまりないため、メディアの注目にも拍車がかかるようになってきた。

 「最初はあるネット系のニュースサイトでした。そこで紹介してもらったあと、サイトを見てみるとつながらなくなっていたのです」。利用していたサーバが落ちたのは初めての経験だった。焦ってサーバの管理画面を開くと「アクセスが多すぎたため、データベースのパスワードを変更しました」という表示。何の連絡もなく、一方的に設定を変えられていたのだ。

 「急いで問い合わせをしましたが、すぐに対応してくれるような見込みはありませんでした……。しょうがないので即日開通できるサーバを急いで調達し、その日のうちになんとかデータを移行させたのです」。この時はなんとか危機を乗り越えられた小川さんだったが、その後も増え続けるアクセスに悩まされることになる。

 次に襲ってきた危機は2008年3月31日。ちょうどガソリンの暫定税率が廃止される日だった。4月1日からはガソリン価格が高騰する……。そうした社会情勢をマスコミも追っていた。その日小川さんのもとにも1日3本の取材が来ていた。

 「軽い気持ちで取材を受けていました。サイトの宣伝になるからいいかな、と。ただ、あれほどアクセスが来るとは思ってもいませんでした」。マスコミの破壊力は予想をはるかに越えるものだった。あっという間にサイトはダウン。増え続けるアクセスにサーバは悲鳴を上げ、小川さん1人で対応しきれるものではなかった。エンジニアの友達にチャットで助けてもらいながら手を尽くしたが、すぐには解決できなかった。

 「そのときは家にこもりっきりで必死に対応しましたが、それでも復旧まで数日かかってしまいました。その間、全くサイトがつながらない状態でした……」。つながらないことでユーザーの不満も爆発した。ライブドアで開設していた運営ブログには非難のコメントが数多く書き込まれた。「あの時は本当に大変でしたし、辛かったです」

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