まぼろしの“ドイツ手帳”を求めて――COATED DESIGN GRAPHICS2009手帳マッピング(1/2 ページ)

COATED DESIGN GRAPHICSをご存知だろうか? ロフト、東急ハンズ、丸善など大手店舗で個性派手帳を展開するCOATEDだが、しかしその制作者の実態は謎のベールにつつまれたまま。そこで同社・齋藤聖一代表への独占インタビューをお伝えしよう。

» 2008年09月24日 20時00分 公開
[郷好文,ITmedia]

 私の手帳観。使い手の掌(たなごころ)と懐(ふところ)に密着して、仕事や人生をクリエイティブにする。常に寄り添い、自分の影法師のような存在――それが手帳だ。開けばイマジネーションをかきたて、落ち込んだときもモチベーションを盛り上げるのである。

 だからこそ“赤い糸の運命”を感じて選びたい。2007年秋、名古屋の東急ハンズで、「なんと思想のある手帳作りか!」と一目ぼれをした手帳があった。クリエイティブな手帳観を感じ、これからの1年を託した。おかげで、過去の自分を追い越そうという意欲を失わずに、1年間やってこれた。感謝している。

 それが、COATED DESIGN GRAPHICS(コーテッド・デザイン・グラフィクス)の手帳である。

COATED DESIGN GRAPHICSって何者?

 読者の皆さんは、COATED DESIGN GRAPHICSをご存知だろうか?

3つの個性的な手帳

 上の写真はいずれもCOATED DESIGN GRAPHICS製。黒の手帳が私が愛用している「Entdeckungen」で、意味はドイツ語で「Discoveries」(発見)だ。ピンクの「Guild」(ギルド)はCOATEDフェチである知人Kさんのモノ。そしてブルーはこの連載1回目で紹介した蛇腹手帳「HANDBUCH」(ハンドブック)である。

 ロフト、東急ハンズ、丸善など大手店舗で個性派手帳を展開するCOATEDだが、しかしその制作者の実態は謎のベールにつつまれたまま。メディアへの露出はなく、インタビューさえない(少なくとも私は知らない)。何しろ今どきWebサイトさえないのだから恐れ入る。どんな人物がこのクリエイティビティーあふれる手帳を生みだすのか、憶測がひとり歩きするのだ。

 この「2009手帳マッピング」連載も第4回目、ヤマ場に差し掛かった。そこでCOATED DESIGN GRAPHICSの謎(の一部)を明かそうではないか。

 私は、COATED DESIGN GRAPHICSの齋藤聖一代表への独占インタビューを敢行。手帳LOVERSへ一石を投じること間違いなし、ある意味“奇跡のインタビュー”である。COATEDの2009年版手帳ラインに込められた秘密も分かる――かもしれない。

蛇腹はどんなアイデアから生まれた?

 COATEDといえば、ユニークなデザインが特徴だ。かくいう私も「HANDBUCH」の蛇腹や表紙のホログラムに魅力を感じた。齋藤代表はこう語る。

(左)蛇腹を開くと見開き10週間分。(右)“C”のホログラムに注目

 「デザインを生業(なりわい)にしていますので、どうしても複数のプロジェクトを同時進行させざる得ないことがあります。似たような依頼も多く、進行していく過程でかなり頭の中が混乱します。それを避けるために数カ月単位でスケジュールを把握しなければならなかったためにできたのが、蛇腹手帳だったのです。かなり私的な手帳ですね」(齋藤代表)

 「(ホログラムなどのような)デザインに関してですが、手帳は人前に出すものですので、相手が引いてしまわない程度のカッコ良さとは? を念頭に考えてデザインしています」

 なるほど、凝りに凝った“全長5メートルの手帳”の誕生の理由は「(同時進行スケジュール管理で)同じ苦しみを味わっている人もいる」というわけだ。

 私見ではあるが、表紙のホログラムには「我、いくらでも新世界を発見せり」といった意味が込められているのではないだろうか。角度によってさまざまな像を映し出すホログラム。自分にも世界にも、日々ながめる角度を変えれば新しい発見があるのだ。

ドイツの会社なの? GmbHのなぜ

 このほかにも細かいこだわりが目を引くCOATEDの手帳。知人Kさん(女性)が「女性の手にぴったりなの」という細長いHB6(B6サイズの半分)は、男性の私が実際に手にすると微妙なスリムサイズ。実線と破線の絶妙なバランスや色使い、ユニークなデザインのコンセプトとはなんだろう。

 「あくまで手帳ですので、読んで字のごとくなるべく手になじむサイズを追求しています。(似たサイズの手帳が店頭に並ぶ中で)なるべく埋もれないようにという商業的な理由ももちろん配慮しています」

 「レイアウトは定番といえども毎年微妙に変えてます。カーニング(文字間調整)を緩くしたり、ポイントを下げてみたりと微調整の連続です。10年以上作ってますが、なかなか完成させることができずにいますね。使いやすさと視認性をコンセプトに、空白の使い方やフォントサイズや配色、紙のセレクトで日夜、格闘しています」

 これは少々蛇足になるが、COATEDにはドイツ語の製品名が付いた手帳が多い。手帳のロゴにはGmbH(ドイツ語で有限会社の意味)と書いている手帳もあり、当初はドイツ製か思ったほどだった。なぜドイツ語なのだろうか。

 「文字もデザインの1つ。今はドイツ語の形が一番カッコイイと思っているので製品に使っているケースも増えています。GmbHを使っているのは、COATED DESIGN GRAPHICSをそのまま書き入れるのにちょっと面積が足りない製品です」

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