第20回 考えるためには“情報は邪魔” インプットを遮断しよう実践! 専門知識を教えてみよう(1/4 ページ)

前回の記事で「量感を身につけるためには、目をつぶってイメージを広げてみる」ことが大事だと書きました。「目をつぶる」とはいったいどういうことなんでしょうか。

» 2008年11月04日 11時55分 公開
[開米瑞浩,ITmedia]

 前回の記事で私は「量感を身につけるためには、目をつぶってイメージを広げてみる」ことが大事だと書きました。これは基本的には学習者が自分で行うことではありますが、かといって「教える立場」に立ったときには「本人の自主性にまかせる」と称して放置するわけにもいきません。指導者が意識的にそのトレーニングをする必要がある、とも書きました。そこで今回はその続きを書きたいと思います。

 まず、次の2つのシーンを見ていただきましょう。どちらも、小学生に野球の指導をしている場面です。なお、どちらが良い悪いということではなく、単に目的の違う2種類のトレーニングというだけです。

シーン1:バッティング練習

 ピッチングマシンを使って、打撃練習中。バッターのA君は外角低めの速球が苦手なので、その設定にマシンを合わせて、何球も打ち続けているところ。コーチが横から声をかけているところを聞いていると、

コーチ ボールをよく見て

コーチ 脇しめていけよ

コーチ もっとタイミング早く

コーチ バットの軌道イメージして打てよ

コーチ イメージ通り振れてるか?

シーン2:土壇場ピッチング練習

 ピッチャーのB君とコーチと2人でピッチングの練習中。ところが2人ともボールは持っていない。 コーチが大声でなにやら喋り続けているのを聞いてみると、まるで実況アナウンサーのよう。

コーチ 試合は9回裏、相手は強豪Cチーム。1点リード。ランナー1塁2塁、1アウト、あと2アウトで勝ち

コーチ でも相手は強豪、しかもこれから上位打線、次のバッターはぶんぶん振り回して来る感じだ。一発食らうかもしれないと思ったら呼吸が浅くなってきたあ!

コーチ おっとピッチャーB君マウンド外しました。少し間合いを空けるもようです。何度か深呼吸をして……深呼吸、そう、腹式で……さあ、B君マウンドに戻ります。

コーチ ランナーを軽く牽制してセットポジションから投げ込む1球目は……どうする? どこに投げる?

B君 内角低め!

コーチ 投げた! 1球目は内角低め! ……バッターどうする? どうなった?

B君 見送り!

コーチ ストライーク!! バッター見送った!


 念のためにもう一度書きますが、シーン2の土壇場ピッチング練習のほうでは2人ともボールを持っていません。ボールを持たずに単に内イメージだけでトレーニングをしているわけです。そんなことでトレーニングになるのかよ、と思いそうですが、これが意外になるんだから不思議なものです。

 先ほどの2つのシーンを比べてみると、コーチが「イメージ」という言葉を使っているのはシーン1のほうですが、「イメージトレーニング」をしているのはシーン2のほうです。その最大の違いは実は、

  • 実際にボールを使っているかどうか

 にあります。シーン1は本物のボールを打つ練習なので、実は「イメージ」をしている余裕がありません。それに対してシーン2では実際にボールを投げるわけではありませんので、それ以外のことに気を回す余裕が出てきます。それ以外のことというのはこの場合「土壇場」という状況です。

 試合の中ではこのような「いよいよピンチ!」という状況がどこかで起こるものですが、いきなり「ピンチ」の場面に遭遇した時に適切な対応をしようと思っても、なかなかできるものではありません。そのためにイメージトレーニングをしていたのがシーン2です。

 この場合、「土壇場」における状況判断のトレーニングになればよいので、ピッチング動作そのものをする必要はありません。逆に、投げることを意識するとかえって邪魔になってしまうので、ボールを使わないわけです。

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