遅延ストレスを減らし、快適に会話する目的別に使いこなす「遠隔会議システム」、導入と活用ポイント(1/2 ページ)

人間は遅延が0.5秒を越えるとストレスを感じる。「なんとなく会話しにくい」のはこのためだという。遅延ストレスなく会話できることも、会議システムを使う上で重要なのだ。

» 2008年11月04日 19時05分 公開
[豊島美幸,ITmedia]

 「聞こえますか」「……。はい、聞こえます」。時間差で交わされる会話を経験したことがあるだろうか。

0.5秒以上、音声画像が遅れるとストレス!?

 「人間は遅延が0.5秒以上になると、ストレスを感じるといわれている」と指摘するのは、遠隔会議システムを扱う販売代理店のVTVジャパン代表取締役、栢野正典(かやの・まさのり)さん。会議システムを使っていて「なんとなく話しにくい」「なんとなく使いにくい」のは、こうした遅延ストレスの場合が多いという。

 エラー耐性の解説で取り上げた米国のVidyo(ヴィディオ)の会議システム(155万5155円)では、「遅延の解決に最もウエイトを置いた」(栢野さん)とし、遅延を従来のテレビ会議システムの0.5〜0.6秒から0.2秒に減らした。

 国内メーカーのエイネットも、いかに遅延を抑えるかに取り組んでいる。同社のテレビ会議システム「Fresh Voice V5」(168万円)では、従来の同社製品の約0.8秒から0.2秒に減らした。遠隔会議を快適にするには「音が違和感なくクリアに聞こえることが最重要」(エイネット)で、その課題の1つに音声遅延を挙げているのだ。

 各通信会社や回線状態によっても大きく変わるが、エイネットによると通話遅延は固定電話で0.1〜0.2秒、携帯電話やIP電話で0.2〜0.4秒程度。日常で、電話通話で遅延を感じることはあまりないだろう。0.2秒とは、ストレスなく快適に会話ができる遅延時間といえそうだ。

データの圧縮や戻しの回数を減らし、遅延を防ぐ

 各メーカーは遅延を解決するため工夫をしているが、Vidyoではどうしたか見ていこう。

 遅延が起こる原因の1つに、送信データ量を減らすため、データを圧縮するエンコード処理と、圧縮したデータを元のデータに戻すデコード処理がある。



 既存のMCU(多地点会議システム)を使ったテレビ会議システムで、3拠点での会議中にAさんからBさんに画像データを送る場合、圧縮と戻し処理はどうなるだろう。

 まずAさんの送るデータは圧縮され、MCUに送られる。MCUがそれを画像データに戻す。MCUでは送受信データ量を減らすため、2拠点以上から来る画像を、自動的に1枚の画像に統合する。そのため、Aさんから送られてきた画像は、ここで1枚の画像へと統合される。さらにMCUは、統合画像データを圧縮してBさんに送信。受け取ったBさんが元の統合画像に戻して、ようやく映像を見ることができる。

 つまり圧縮と戻しを2回ずつ行った上、統合処理もする。コーディングに関わる処理が4回に画像統合処理が1回で、計5回の処理。こうした処理で遅延が生じてしまうのだ。データを何度もいじるから画像も劣化する。

 一方、次世代のMCU、Vydeo Routerでは、圧縮も戻しも、画像統合もしない。必要な情報をそのまま送り出すだけである。だからAさんがデータ送信する際に圧縮を、Bさんがデータを受け取る際に戻しをそれぞれ1回行う。つまり、コーディングに関わる処理が2回で済むのだ。

 処理回数の差が3回。この差が遅延の解消につながっているというわけなのだ。さらに、「画像と音声のズレもストレスになる」(栢野さん)ため、映像の遅延に音声タイミングを合わせたという。

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