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» 2008年12月12日 08時54分 UPDATE

医者要らずでできるインフルエンザ対策:【番外編】「新型インフルエンザ」って何?

近年大きな問題となっているのが、H5N1型ウイルスの新型インフルエンザ。この新型ウイルスは人が免疫を持っていないため、世界的に大流行(パンデミック)すれば誰もが命の危険にさらされる危険性があるという。その正体とは?

[SOS総務]
SOS総務

 師走のインフルエンザ対策特集。前回まで従来型のインフルエンザ対策を紹介してきた。今回から【番外編】として新型インフルエンザについて見ていこう。

 「被害は第二次世界大戦以上」といわれる新型ウイルスとは一体どんなものだろう。その猛威について警鐘を鳴らし続けている国立感染症研究所ウイルス第三部部長の田代眞人(たしろ・まさと)さんに聞いた。

遺伝子の突然変異からヒト型インフルエンザへ

 10年から40年の周期で猛威を振るうといわれている「新型インフルエンザ」。この数十年は発生がないことから、「そろそろ流行するのでは」といわれて久しい。また近年は、強力な病原菌を持つ「H5N1型」というインフルエンザが世界各国で流行。広い地域で大量の鳥の命を奪った。このウイルスに由来する新型インフルエンザが大流行する危険性が、今、大きな問題になっているのだ。

mt_tori.jpg 鳥インフルエンザの公式発表に基づく分布 出典:国立感染症研究所

 WHO(世界保健機関)は1999年、「インフルエンザパンデミック計画」を策定した。2005年には「世界インフルエンザ事前対策計画」を改訂し、各国に対応を要請。国内でも2007年、新型インフルエンザ対策専門家委員会議により「新型インフルエンザ対策ガイドライン(フェーズ4以降)」がまとめられた。各国の研究者たちや国連などの関係機関は、その恐ろしさや事前の準備、対応策の必需性を強く訴えている。

新型インフルエンザの警報フェーズ
WHOによるフェーズ 定義 区分
フェーズ1 ヒトから新しい亜型のインフルエンザは検出されていないが、ヒトへ感染する可能性を持つ型のウイルスを動物に検出 前パンデミック期
フェーズ2 ヒトから新しい亜型のインフルエンザは検出されていないが、動物からヒトヘ感染するリスクが高いウイルスが検出
フェーズ3 ヒトヘの新しい亜型のインフルエンザ感染が確認されているが、ヒトからヒトヘの感染は基本的にない パンデミックアラート期
フェーズ4 ヒトからヒトヘの新しい亜型のインフルエンザ感染が確認されているが、感染集団は小さく限られている
フェーズ5 ヒトからヒトヘの新しい亜型のインフルエンザ感染が確認され、大きな集団発生が見られる
フェーズ6 パンデミックが発生し、一般社会での感染が急速に拡大している パンデミック期
パンデミックが終息し、発生前の状態へ急速に回復する時期 後パンデミック期
WHOは新型インフルエンザの流行の警報フェーズを6段階で定義し、以下のような6つフェーズに分けている(2008年7月28日現在、フェーズ3)。
参考資料:厚生労働省『事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン』

 このようにH5N1型ウイルスによる新型インフルエンザが世界規模で警戒される理由は、過去に例を見ないほどの猛威が予想されるからだ。そもそも鳥のウイルスは、ほとんどが弱毒型で、過去のヒト型インフルエンザはすべて鳥の弱毒性ウイルスに由来している。しかし、問題のH5N1型は強毒(高病原)性なのだ。

 ウイルスは鳥だけに留まらず哺乳類にも感染する。ヒトにも感染し、WHO(世界保健機構)は、H5N1型ウイルスで今までに約400人の患者を確認したと発表している。

 WHOインフルエンザ協力センター長も務める田代さんは、「H5N1型ウイルスに感染すると患者全員が重症で、残念ながら治療しなければ100%、治療しても60%の人間が命を落としています。しかも400という患者数は、氷山の一角でしょう。ほかにも検査がされていない、症例が報告されていないといったケースが考えられるので、残念ながら実被害はもっと大きいと考えられます」と話す。

 患者の90%以上が、40代以下の若い層なのも特徴だ。一般的に抵抗力が低いと思われる高齢者は、ほとんど感染していない。

 若い層への感染に加えて心配されるのが、今までは鳥同士、あるいは鳥からヒトに感染していたこのウイルスが、ヒトからヒトへと広がるヒト型インフルエンザに変化することである。鳥のウイルスは本来、ヒトへの感染効率は非常に低い。

 しかし、ウイルスが増殖、複製される段階で遺伝子が突然変異することがある。現在までの研究で、その変異が蓄積されると、ヒト型に変化することが分かっている。感染すれば、人間はこの免疫を持っていないので被害は大きい。そして突然変異による被害が起きるのは時間の問題といわれる。

 前述のような偶発的に鳥から感染する場合から、遺伝子の変化による効率のよいヒト間の感染の広がりの間に、どんな遺伝子変異が必要なのかは、まだ明確には分かっていない。ただ、どちらも命にかかわる恐ろしさには変わりない。

田代眞人さんプロフィール

医学博士。20年以上前から鳥インフルエンザの研究に携わるエキスパートで、現在、国立感染症研究所ウイルス第三部部長、WHOインフルエンザ協力センター長を務めている。専門はウイルス学、感染症学。共著書に『新型インフルエンザH5N1』(岩波書店刊)、『鳥インフルエンザの脅威』(河出書房新社刊)など多数ある。


『月刊総務』2008年11月号

「待ったなし!の脅威 新型インフルエンザ・パンデミックに備える」(P46〜51)より


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