インタビュー
» 2009年03月13日 16時25分 UPDATE

ひとりで作るネットサービス:iPhoneアプリはポスト・イットで作る!? 「QuadCamera」「ToyCamera」深津さん (1/2)

個人でも世界を相手に勝負できるはず。そんな信念で数々のiPhoneアプリを個人でリリースしている深津さん。iPhoneの画面に貼った付せんにデザインを手書きして操作感覚を確かめているという。iPhoneのカメラアプリ、「ToyCamera」「QuadCamera」の誕生秘話などを聞いた。

[田口元,ITmedia]

 ひとりで作るネットサービス第40回は、数々のiPhoneアプリを個人でリリースしている深津貴之さん(29)を取り上げる。「個人でも世界に何かを発信できるはず」という信念のもと、活動を続ける深津さんの狙いはどこにあるのだろうか。

梱包材のプチプチ――日常の気持ちいい感覚を表現したい

 「抽象的でうまく言えないのですが、『日常生活の中で気持ちの良い何か』を表現したいと思っています。梱包(こんぽう)材をプチプチつぶしたり、折りたたみ式のケータイをパカパカ開閉したり、深雪を踏んだりする感触とか……」。本職はFlashデザイナーである深津さん。企業のプロモーションサイトの構築などを手がける企業tha(ティー・エイチ・エー)で、「気持ちの良い動き」を表現しようと日々奮闘している。

 そうした「気持ちの良い動き」をiPhoneアプリでも表現したかったという。深津さんが最近リリースした連写できるカメラアプリ「QuadCamera」では、細部にそのこだわりを見ることができる。「基本的にアップルが提供するインタフェースのライブラリは使いません。iPhoneのアプリケーションというよりは、普通に「カメラ」として位置づけたかったので、ボタンや設定画面のインタフェースも自分で一から作り込みました」

mt_q1.jpgmt_q2.jpg (左)QuadCameraのトップ画面、(右)連写画面

 こうした作り込みが評価され、海外のメディアにも数多く取り上げられた。WIREDやApple Insiderなどのサイトでもレビューが掲載され、有料アプリにもかかわらず、1日で1000を超えるダウンロードがあった日もあるという。深津さんが最初にiPhoneアプリをリリースしたのが2008年10月。わずか4カ月ほどでこうした成功を収めた影には、彼なりの緻密(ちみつ)な計算とノウハウの積み重ねがあった。

「調査/分析した上でかっこいい表現」を学んだロンドン

mt_hu2.jpg

 「デザインとスタイリングは違うと何度も言われました。きちんと市場調査をして競合を分析し、問題解決や新しい価値を提案するように心がけています」。日本の大学を卒業後、深津さんはロンドンの大学で工業デザインを学んでいた。デザイン業界という華やかなイメージとは裏腹に、大学ではきっちりとした調査/分析手法を叩き込まれた。

 留学の理由は「インタフェースが好きだった」ため。Webのインタフェースに限らず、もっと広く勉強したかった。ロンドンの大学では旋盤を操作したり、プラスチックの成型なども経験できた。しかし卒業に向けて自分の進路を絞っていく必要があった。「そのころ盛り上がっていたWebの世界に進むか、工業デザインに進むか、悩んでいました」

 そんなとき、thaの代表で著名なFlashデザイナーの中村勇吾さんから声がかかった。「夏休みに日本に帰ってくるなら一度遊びに来ませんか」。当時、Flashや海外の技術についてブログを書いていた深津さんは中村氏とSNSでつながっていた。その縁でthaへの就職が決まり、卒業まで2年を残したままロンドンの大学を中退し、帰国した。

 中村さんに会った深津さんはすぐに帰国を決意し、thaの3人目の社員になった。「Webが盛り上がっていたということもありますが、工業デザインはやはり個人でやるにはハードルが高い、という理由もありました。設備だけでもかなりのお金がかかりますし……。Webでしたら自由に自分の好きなものが作れると思ったのです」 

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