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» 2010年05月12日 16時30分 UPDATE

これだけは気をつけろ! 「テープ起こし」虎の巻 (1/4)

取材やインタビューなどの録音をテキストに起こす、いわゆる「テープ起こし」。まったく同一のテープ起こし作業を複数の業者に同時発注するという「実験」を通じて、専門業者にテープ起こしを依頼する際のポイントを探った。

[山口真弘,Business Media 誠]

 取材やインタビューの経験がある人はご承知のことかと思うが、人間が話す内容をリアルタイムにテキストに起こすのはなかなか難しい。超がつくほど高速なタッチタイピングの技と、極限まで鍛え上げたIMEと、手にしっかりなじんだキーボードがあったにせよ、等倍再生で日本語の会話をテキストに起こすのは、プロのライターにとっても至難の業だ。頭の中で次の質問を組み立てながらとなると、なおさらだ。

取材やインタビュー、会議の議事録作成などで必須の「テープ起こし」

 こうした場合、内容やスケジュール、予算にもよるが、会話の内容を録音した上で「テープ起こし」として専門業者にアウトソースするという選択肢も考えられる。もちろん時間をかけて自力でテープ起こしをする方法もあるが、複数の案件がバッティングするような状況においては、テープ起こしの作業は、アウトソースが可能な唯一の工程でもある。外注に任せることで自分は別の作業に注力するという選択肢も、候補の一つとして持っておいてよいと思われる。取材やインタビューだけでなく、会議の議事録作成や全体朝礼における社長の講話のテキスト起こしなどについても同様だ。

 もっとも、およそ1分200円前後といわれる単価に見合った成果物が得られるのかどうかは、実際にやってみないと分からないというのが正直なところだ。ばく大な時間と費用を費やした結果、自力で行うのに比べて著しく低いクオリティであれば、そもそも外注に出す意味がない。また業者の当たりはずれも、1回きりの発注ではなかなか判断しづらい上、仮に複数の業者を比較するにしても、異なる音源データをもとに判断するのはナンセンスだ。比較するのであれば同一の音源データで比較しないと意味がない。

 そんなこともあり、仮にテープ起こしの外注に興味を持つ立場であっても、実際に依頼した経験は皆無という人が大多数ではなかろうか。かなりニッチな分野での話であり、関係ない人にはとことん関係ない話だろうが、筆者の周囲でもテープ起こしを外注に出してみたいと漏らすライターや編集者は多い一方、実際に出してみたという話はほぼ聞いたことがないのが現状だ。

 そこで今回は、1本の音源データをもとにしたテープ起こし作業を、専門業者3社に同時に発注し、そのプロセスや納品物のクオリティを比較することで、テープ起こしをアウトソースする場合のコツを探ってみたい。

st_tape00.JPG ネットで「テープ起こし」といった語句で検索すると、さまざまな専門業者のページがヒットする。今回はこの中から3社を選んでテープ起こしを依頼してみた

テープ起こしの基礎である「素起こし」「ケバ取り」「整文」とは?

 本論に入る前に、まずはテープ起こしに関する基礎知識についてまとめておこう。

 ネットで「テープ起こし」といった語句で検索すると、さまざまな専門業者のページがヒットする。どの業者も加工の度合いによって詳細な料金プランを設けているが、いちばんベーシックなのは「素起こし」と呼ばれる、インタビュー音声をそのままテキストに起こすプランだ。「素起こし」では、会話に含まれる「あー」とか「えー」といった発声もそのまま書き起こされる。つまり聞いたままの内容がテキストになると考えるとよい。今回選択したのもこのプランだ。

 「あー」「えー」などを取り除いて整形された状態にしてくれるのが「ケバ取り」と呼ばれるプランだ。喋り方のクセにもよるが、人によっては素起こしのままだと発言にまったく意味が通っておらず、ケバ取りをしてようやく言わんとすることが理解できるといった場合も少なくない。業種にもよるが、会議やセミナー、各種インタビューでは、この「ケバ取り」が事実上の標準になると考えてよい。

 さらにケバ取りをしたテキストを、喋り口調ではなく文章として記述したかのような文体に書き直し、意味が通る文章にしてくれる「整文」なるプランもある。例えば芸能人やスポーツ選手が出版している自伝は、本人が喋った内容を録音してテキストに起こし、書籍としての体裁を整えるケースがほとんどだが、ケバ取りだけで意味が通る文章に仕上がることはまずないので、意味が通るように整文化し、さらにゴーストライターが手を加えることになる。どこまでしっかりとした文章に整形するか、口語をどの程度残すかといった整文の"程度"については、ケースバイケースで交渉することになる。

 主なプランは以上の3通りで、料金はほとんどの場合、「素起こし=ケバ取り<整文」となる。ケバ取りも編集作業が必要なので料金が加算されるかと思いきや、たいていは素起こしと同一料金だ。素起こしを厳密に行おうとすると「あー」「えー」などもすべて書き起こさなくてはならず、むしろ手間がかかるため、業者的にはむしろケバ取りのほうが歓迎されるようだ。いっぽう、編集の手間がかかる整文については、ケバ取りの基本料金に追加料金が上乗せされるという寸法である。

 もっとも、実際には各社ごとに、および実作業を行う担当者によって、かなりの認識の違いがあるのが現状だ。素起こしのつもりで依頼したらケバ取りに近い状態で上がってくる場合もあるし、その逆もある。担当者の癖はもちろん、会話の主の喋り方の癖に引きずられて内容がブレる場合もある。

3社とのやり取り、発注から納品までがすべてネット上で完結

 では、各社に発注してから納品されるまでの数日間のやりとりを見ていこう。テストの方法は冒頭に記したように至ってシンプルで、インタビューを録音したMP3データを、3社のテープ起こし業者に同時に発注するというものだ。発注はすべて同一営業日に行った。

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