インタビュー
» 2011年12月06日 10時00分 UPDATE

中小企業にWebサイトを:植木屋さんが「みんビズ」に決めたわけ

紅葉の季節、忙しい職種が植木屋さん。すなわち造園業である。伝統的な職種だが、Webサイトをオープンして新たな顧客を集めている人もいるのだ。その内の1人、「横濱大正殖林」を1人で運営する矢倉寛之さん(29歳)に話を聞いた。

[Business Media 誠]
st_yagura01.jpg 横濱大正殖林のWebサイト

 日本全国が真っ赤に染まる紅葉の季節、冬仕度でとても忙しくなっている職種がある。その1つが植木屋さんだ。落葉樹は葉が落ちて樹木が休眠する今の時期が剪定に適しているという。また正月までにさっぱりしたいと思う人が多いのか、この時期に庭木の剪定を依頼する人が絶えない。害虫の駆除や防寒対策も秋から冬にかけての時期がいいようだ。

 そんな忙しい時期の植木屋さん。伝統的でレガシーで、一見ITなんか使ってなさそう――と思われがちだが、最近の植木屋さんは独自のWebサイトを開設して新しい顧客を開拓している人も現れている。この多忙な時にどうやってWebサイトをオープンし、更新を続けているのだろうか。神奈川県横浜市で横濱大正殖林を1人で運営する矢倉寛之さん(29歳)に話を聞いた。

どれだけいい技術を持っていても、売れなければ……

st_yagura02.jpg この矢倉さん、樹木医にして一級造園技能士、二級造園施工管理技士、ベーシックツリークライマーという正真正銘の植木屋さんなのだが……

 この矢倉さん、樹木医にして一級造園技能士、二級造園施工管理技士、ベーシックツリークライマーという正真正銘の植木屋さんなのだが、実は独立して横濱大正殖林を立ち上げてからまだ1年しかたっていない。

 大学を卒業した後、大手園芸会社の造園部で現場の担当者として働いていたが、営業担当によって仕事の内容と客の要望にかい離があったという。「営業の担当者が現場の仕事をできればベストですが、現場の仕事がまったくできなかったり、理解していなかったりする担当者だとお客さんから無茶な要望を聞いてきて、結局できなかったり、できたとしても要望とは違うものになったりしていました」

 自分で見積もりして、自分で作業ができれば、お客さんにとっても自分にとってもいいはず。そう考えて独立した矢倉さんだったが、当初は固定客の獲得に苦労した。「どれだけいい技術を持っていても、売れなければ仕方ありません。仕事をやらなければ1円にもならないので、どうやって売っていくのかが大事ということを痛感しました」

 特に植木屋という職業は繁閑が激しい。5月のゴールデンウィークごろから12月末までは忙しいが、1月から4月ごろまでは仕事が全くないことも多いという。「忙しい時は、仲間の植木屋さん同士でお互いに仕事を融通していますが、仕事がない時は何ともしようがありません……。直接の固定客を増やしたいと考えていました」

 そのためには存在をアピールしたい。ただ、場当たり的に広告を出すより、地域に根付いた営業もしたいと思っていた。「遠くの知らない家の庭よりも、いつも見ているご近所の庭をきれいにしたいんです。いつも見ているから『ここがよくなれば、もっといい庭になる』というのも分かりますしね」

 そこで思い付いたのがポスティング。「これは手の入れ甲斐がありそうだ」と思った近所の家にチラシを配るのである。これはそれなりに効果があった。「(矢倉さんが見て)枝が伸びているから今すぐやったほうがいいなと思っても、家主は気にしていないことが多いんですね。ポスティングすることで気づく人もいて、そういう人から申し込みがありました」

 ただし、この時のポスティングは近所だけが対象。そういう意味では市場は極端に狭い。それにポスティング自体の費用は少なくても、矢倉さん自身の時間が必要なこともネックになっていった。

みんビズで写真が、広告が、Webサイトが変わった!

st_yagura03.jpg 愛用のThinkPadでサイト製作

 次に思い付いたのが、Webサイトを作ること。まったくの素人だったが当たって砕けろの精神でWebサイト製作の指南書を買い込み、HTMLから直接作り込んでみた。比較的手の空いた1月から作り始めて2カ月の間、没頭した。3月中に何とか完成したのである。

 日常的にインターネットを利用しない高齢者はポスティングなどで獲得するとして、Webサイトは30〜40代の比較的若い人たちが興味を持つようなサイトをイメージした。自作のデザインは正直「どうなのか」と思ったが、それでも新規のお客さんが来訪してくれた。

 そんな時、9月中旬にオープンしたGoogleの「みんなのビジネスオンライン」(みんビズ)を知ることになる。実はそれまでも自分で作ったWebサイトについて、Web製作会社から改善を薦められていたと苦笑い。いつも「カッコイイデザインにしたい!」と強く思っていたが、そんな予算はなかった。そこで無料で使えるみんビズを使うことにしたのだ。

 みんビズを使い始めて一番驚いたのは、写真を張り付ける作業が簡単だったこと。今までは写真をサーバにアップロードし、HTMLファイルのIMG SRCタグで指定して、レイアウトなども自分で入力しなければならなかった。しかもHTMLを直打ちしていたので、完成形を想像することも難しいのである。

 ところが、みんビズではWebブラウザ上で作成途中のWebサイトを見ながら、画像を配置できる。これまではHTMLを書くだけで大変だったのが、文章と画像のレイアウトを工夫できようになったのだ。「公開しているページ数にそれほど変化はないですが、見せ方が大きく変わりました。それまでは単純に同じ大きさの画像と文章を交互に繰り返すだけでしたが、みんビズでは、ここは小さめの画像を右寄せで入力して、大きめの画像で注目を集めて、というように全体のバランスに気を遣えるようになりました」

 もう1つ。みんビズでは「広告が表示されなくなったのがうれしい」という。「広告がポップアップしたらびっくりして閉じちゃう人もいますから、ビジネスのWebサイトとしては広告が入らないほうがいいですね」。もちろん完成したWebサイトは「スタイリッシュでカッコイイものができました」。

集客にも効果、Web解析も標準搭載でカイゼン可能

st_yagura05.jpg オフィス兼自宅の一室にて

 単なるカッコだけではない。集客の手応えを感じたのは9月中旬ごろ。それまでも毎月何件かの申し込みをWebサイト経由で受けてはいたが、台風15号の影響で各所で樹木が倒れたのである。

 「すごいたくさんの電話がかかってきました。と言っても1日2〜3件ですが、1人でやっている植木屋さんとしては驚きの件数です」。ポスティングしたエリア外からも電話がかかってきたので、Webサイトに掲載していた電話番号を見たのは明らかだった。「わざわざ検索してWebサイトにたどり着いているので、急いでいる人が多かったようです。そんな人はメールより電話ですよね」

 その後も継続的にWebサイト経由で受注しているという。みんビズはWeb解析ソリューション「Google アナリティクス」も標準で利用できるので、ページビュー数やユニークユーザー数などの指標を元に、製作したWebサイトを作りっぱなしではなく常に改善しながら運営することが可能だ。

 「HTMLを直書きしていた時は、自分のサイトの情報が見られているのか不安でした。今ではGoogle アナリティクスのおかげで訪問者数もリアルタイムで確認できますし、どんな検索ワードで流入しているかも把握しています」。ちなみに横濱大正殖林のサイトでは「植木」「剪定」「地域の名前」で検索してくる人が多いという。

オンラインコミュニケーションで未来の造園業へ

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 大学時代からGoogle検索で文献を探したり、Gmailを使っていたりしていたという矢倉さん。「HTMLから直接作りこんでいたころの無料サービスはそれほど選択肢がありませんでした。ところがみんビズは無料で、しかも普段使う“Google”に対する親近感があった」

 これからは造園業も変わっていく。「昔は職人さん1人あたり1日の支払いが料金のベースになっていました。最近では請負型と言って、対応する樹木1本あたりの支払いをベースにしているところが増えています」

 もちろんそうした請負型を否定するわけではないが、請負型には自社の職人が少なく、下請けの職人への発注を中心とするため料金も高額になってしまいがち。そうした理由のため、最後まで責任をもって密着した対応をすることが難しい場合が多いという。そんな従来型のやり方ではなく、職人1人1人が地域に根ざして活動するやり方もあるのではないだろうか。「実は植木屋という職業は、それほど経費がかかりません。特に手入れするだけであれば、自分以外は軽トラックと機材があればできます」

 今後はさらに、オンライン上でのコミュニケーションを模索する。「5月から12月は多忙すぎて、自力で作った以前のサイトは日々チェックする気力すらなかったですが、みんビズなら、ちょっとした修正がすぐかけられるので助かります。(新しい機能の追加も)簡単にできそうですよね」。オンラインでのコミュニケーションによって個人のつながりを大事にしたい――。そう話す矢倉さんであった。

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