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» 2013年11月21日 11時00分 UPDATE

田中淳子の人間関係に効く“サプリ”:いつまでたっても平行線――そんな議論をすっきりまとめる会議術

いくら議論をつくしても話がかみ合わず、まとまらない――こんな経験はないだろうか。そんなときに有効なのは、“話の見える化”。図式化することで理解が深まり、合意の糸口が見えてくる。

[田中淳子,Business Media 誠]

田中淳子の人間関係に効く“サプリ”:

 職場のコミュニケーションに悩んでいる人も多いのではないでしょうか。「上司にこんなことを言ったら怒られるかもしれない」「部下には気をつかってしまうし」――。

 本コラムでは、職場で役立つコミュニケーション術をご紹介します。具体例を挙げながら「なるほど! こういうやり方があるのか」「これなら自分でもできるかもしれない」と感じてもらえるよう、筆者が見聞きした出来事をちりばめています。

 明日から……ではなく、いますぐに試すことができる「コミュニケーションのヒント」をご紹介しましょう。


 これだけ話しているのに、いつまでたっても話がかみ合わない――。会議や打ち合わせのとき、こう感じたことはないだろうか。

 口頭で伝えていることというのは、それぞれの頭の中に概念があって、その概念を言語化して口に出している。聴き手もその言葉を受け取って、頭の中に概念として取り込んでいるため、変換作業が2回起こっている。だから、伝えたつもりのことが正確に表現できていないケースもあれば、相手が受け取った言葉を、伝え手の意図とは異なる解釈を加えて理解してしまうケースもある。

 人はそれぞれ異なる枠組みを持ってコミュニケーションしているので、これは仕方ないことだ。

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 口頭でのやりとりに終始するのをよく「空中戦」と表現する。「空中戦」では話がいつまでもかみ合わないことがあるから「地上戦」にしてみましょう、と言ったりする。「地上戦」とは、紙に書く、ホワイトボードに書く、など、話し言葉を書き言葉、あるいは、絵や図で整理してみようというものだ。

 会議室であれば、たいていホワイトボードがあるだろう。話を聴いているうちに混乱したり、整理したほうがよさそうだと思ったりしたら、そう思った誰かが立ち上がり、ホワイトボードマーカーを手にする。

 そして、「○○さんが言いたいことは、こういうことですか?」と、自分なりに理解したことを文字、絵、図などにしてみる。この時、字や絵が下手でも構わない。「見える化」することに意味がある。

 「こういうことですか?」と問われた側が、「はい、そうです」と応えた場合は、互いの理解が合致していることになるし、「いえ、ちょっと違います」と言われたら、ホワイトボードマーカーを相手に渡して、「だったら、ちょっと書いてみてもらえます?」「この図を自分なりに書き変えてみてください」などと頼めばよい。

 とにかく、互いにホワイトボードを使い、書いたものを見ながら話すと、口頭だけでやり取りするよりも、何の話をしているのかを早く理解できる。

 ホワイトボードがない場合はどうするか。

 A4サイズの白紙を数枚用意しておき、打ち合わせの相手との間に置く。そして、ペンでどんどん書いていくのだ。

 例えば、話の中に大勢の利害関係者が登場するようであれば、「AさんとBさんがいて、CさんがAさんに話したことが……」などと言いながら、人型や矢印を添えていく。そうやって、話している内容を目の前の紙に書いていくと、双方の頭の中にあるイメージがだんだんと擦り合わされていく。

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部下の指導、顧客との打ち合わせも「地上戦」で

 この方法は、打ち合わせだけではなく、部下や後輩の指導にも使える。

 部下や後輩が相談や質問にやってきたとしよう。「この仕事の進め方が分からないのですが」「この業務の流れを教えてほしいのですが」「どういう理屈でこういう仕組みになっているのですか?」といった質問に答える際にも、部下や後輩との間に「紙」を置く。そして、それに書き込みながら説明する。

 こうした会話をスムーズに進めるためには、対面で座るより90度くらいの角度で座るのがいい。相手と自分との間に紙を置いて、二人とも同じ方向で紙を見ながら書いたり、書いたものを見たりしたほうが効率的に理解できる。

 私も人に説明する際、よくA4の紙に鉛筆で書きながら解説する。最後に相手が理解できたら、その紙をコピーしたり、自分が保存しておく必要がないものであれば、そのまま「へたくそな絵と乱暴な字で書いちゃったけど、どうぞ」とそのままで渡したりする。

 紙に書いて理解を合わせるのは、顧客との打ち合わせの場面においても有効だ。

 何かの案件のヒアリングに行ったり提案をしたりする場合、顧客の話している内容を汲み取りつつ図式化してみる。「こういうことをおっしゃっていますか?」などと書いて、相手に示す。違っていれば、顧客もペンを持って、「えっと、ここの部分がちょっと違いますね」などと修正したり、書き加えたりしてくれる。

 ヒアリングの途中で、「正式な提案は次回お持ちしますが、今日のお話しを伺うかぎり、イメージとして、実現なさりたいことは、こういうことでしょうか」とその場でA4白紙に提案のベースとなるようなものを図と言葉で描いて示すこともよくある。

 「ああ、ぼくが言いたかったことはそれです」

 「私たちのイメージは、まさにその通りです」

 などと言われれば、「では、この紙、置いていきます。次回はこれの完成度を上げた提案書を持参しますので」などと言って辞去してくることもある。

 とにかく、口頭でのやり取りに終始するより、文字や絵に落とす「地上戦」はおススメである。

 最近は、持ち運びができるホワイトボード型スケッチブックなども販売されている。あるリーダーは、若手を指導する際、ホワイトボード型スケッチブックを使いながら、あれこれ絵や文字を書いて説明し始めたことで、口頭でのやり取りをしていた時よりも、若手指導にあてる時間をうんと効率化できたという。

 質のよいコミュニケーションを図るためには、こういった便利な道具を身近に置いておくのもよいだろう。

著者プロフィール:田中淳子

田中淳子

 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。

 1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。


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