仕事用ノートPCを買うときに“お得”な量販店のポイントは「利益」なの?教えて、木村先生! 確定申告あるある

ノートPCやデジタルカメラ、仕事に必要な道具だけど購入するには値段が高い。そうだ、家電量販店のポイントを使えば「10万円の壁」も気にしなくてもいいかも?

» 2015年02月20日 11時15分 公開
[宮田健, 監修:木村税務会計事務所 税理士 木村聡子,Business Media 誠]

 「仕事用に長く使える高スペックなノートPCを買おう! 12万円でも長い目で見れば安い!」と思ったのですが、個人事業主にとって10万円以上の買い物は、固定資産として減価償却をしなければなりません。

 「そういえば、こつこつと貯めてきたポイントが3万円分あったっけ」――これを使えば9万円で購入できます。これなら経費になるし、会計処理も簡単です。でも本当にこれでいいのでしょうか。教えて、木村先生!

ポイント値引きで10万円未満――これは消耗品?

木村先生: うーん、ポイント関連はちょっと難しいケースなのですよ。

――やっぱりそうですか……。

木村先生: まずは基本中の基本、ガチガチな「大前提」論から説明しますね。個人が貯めた量販店などのポイントですが、これは日々の生活で得た利益なので「雑所得」ではありません。しかし、それが事業の中で貯めたものだったら「利益」として考えます。

――えっ、じゃあこれは「雑収入」ですか?

木村先生: でも、ポイントというものは「行使しなければ利益にはならない」わけです。使わないまま失効する可能性もあるので、ポイントを得た段階では会計処理できません。これが原則です。

――ということは、1200円のものを買うときに300円分のポイントを使っても900円のものを買ったとはならない?

木村先生: このような仕訳になりますね。

消耗品費 1200円 /現金 900円

          雑収入 300円

木村先生: ただ……、個人事業主に対してここまで厳密な記帳を要求されることはありません。これを「消耗品費900円、現金900円」として処理しても、利益に差はないのでおとがめはないのです。

――10万円を超える固定資産でも同じですか?

木村先生: ガチガチの会計処理ならば、このような記帳を要請されます。

消耗品費 12万円 /現金 9万円

          雑収入 3万円

――やっぱりダメか……

木村先生: ここからは本音トーク。個人事業主が使ったポイントが、いつ、何に対して付与されたのか(事業の買物で付与されたのか、個人消費で付与されたのか)を追いかけることは事実上、不可能だと思います。もう1つ、「少額不追求」という考え方があります。税務署にしても、それを突いて追徴したとしても大した額にはなりませんから見逃す、という考えです。とはいえ、貯まりに貯まった高額のポイントをいっぺんに使うことによって、あまりにも税務上のメリットを受けるのではないか……と心配な場合は、会計事務所に相談するといいでしょうね。

――なるほど。

木村先生: でも、いま買おうとしているノートPCは12万円ですよね。青色申告を選択していれば、そもそも「10万円の壁」を意識しなくてもいいんですよ。30万円未満の物品は「少額減価消却資産」として合計300万円まで一括償却できます(参照リンク)。素直に固定資産として登録しちゃいましょう。

――木村先生、ありがとうございました!

ポイント!:

  • 量販店などのポイントは、原則どおり会計処理するなら「雑収入」
  • あまりに高額なポイント処理でなければ「値引き」対応でも大丈夫
  • 青色申告者なら30万円まで一括償却できる制度を活用しましょう

監修:税理士 木村聡子(きむら・あきらこ)

木村聡子

 2000年に木村税務会計事務所を設立。ブロガー税理士の草分け的存在。セミナー講師や執筆について多数の実績があり。カフェ好きが高じてオフィスをカフェ風にしてしまったほど。ブログでは税金に関するトピックだけでなく、カフェラリーのデータも掲載中。

事務所名:木村税務会計事務所

住所:〒158-0097 東京都世田谷区用賀2-11-10 ケヤキアパートメント201

公式サイト:KIMUTAX.com


インフレ時代の確定申告

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ