所得税額を低くするためには所得控除を積み上げることが重要です。しかし、雑損控除、医療費控除、寄附金控除の3つは年末調整をしたサラリーマンでも確定申告が必要になります。
本記事は参考となる情報提供のみを目的としたものです。実際の申告などにつきましては読者の判断と自己責任でお願いいたします。
「サラリーマンの所得税、どうしたら減らせるの?」の回で、収入から所得税額が決定するまでの計算式について紹介しました。給与所得者(サラリーマン)が所得税額を少なくするためには「所得控除」を積み上げることがポイントです。
14種類の所得控除がありますが、このうち年末調整で申請できるのは11種類。残りの3種類の所得控除である「雑損控除」「医療費控除」「寄附金控除」を申請するためには、1月の給与支給日に同時に配られる「源泉徴収票」を基に、確定申告します。
雑損控除は、災害や盗難、横領などで資産に損害を受けた場合に申請できる所得控除です。ただし、詐欺や恐喝による被害では雑損控除を受けられません。
対象となる人は、納税者本人もしくは総所得金額が38万円以下で納税者と生計を一にする配偶者や親族です。また、対象となる資産は、生活に必要な住宅、家具、衣類など。事業用の資産や別荘、価格が30万円を超える骨董品や貴金属品などは除外されます。
控除できる金額は、以下の2つの計算で求める金額のうち多い方となります。差引損害額とは、損害金額と災害関連支出の金額を足したものから保険金などにより補てんされた金額を引いたものです。
損害が大きく、所得金額以上になった場合は、最大で3年間の繰り越しが可能です。なお、災害にあった年の所得金額が1000万円以下の場合、「災害減免法による所得税の軽減免除」という救済制度もあり、有利になる方を選べます。
所得金額の合計額 | 軽減または免除される所得税額 |
---|---|
500万円以下 | 所得税額の全額 |
500万円を超え750万円以下 | 所得税額の2分の1 |
750万円を超え1000万円以下 | 所得税額の4分の1 |
納税者本人や納税者と生計を一にする配偶者、親族のために支払った医療費が年間10万円(総所得金額が200万円未満の人はその5%)を超えた場合、最高で200万円までの医療費控除を受けられます。控除できる金額は以下の計算式で求めます。
治療のための薬の購入費や、レーシック手術やインプラント手術のような保険適用外の医療費も医療費控除の対象です。さらに、バスや電車などの通院費も合算できますが、タクシー代は臨月の妊婦など必要性が認めらる場合のみとなります。領収書がもらえない交通費は、医療費の領収書にメモ書きしておくのがポイントです。
2008年4月の地方税法の一部改正で導入された「ふるさと納税」。“ふるさと”という名前ですが、実は好きな地方自治体に寄附できる制度です。いまではガイドブックが出版されるほど話題になっていますが、それは特産品などが特典としてもらえることと、寄附金のほぼ全額が所得税や住民税と相殺されるからです。
所得税の場合、寄附金控除がこれに当たります。そもそも寄附金控除では、国や地方公共団体に対する寄附金や公益社団法人、公益財団法人などに対する寄附金のうち、財務大臣が指定したさまざまな寄附金が対象とされています。
寄附金控除による控除額は以下の2つの計算式で求めた金額の低い方から2000円を引いたものになります。
例えば、3万円を寄附した場合、所得税率10%の人は2800円、20%の人は5600円が確定申告で還付されます(計算式は(3万円−2000円)×所得税率です)。
ふるさと納税の場合、メリットが大きいのは住民税の税額控除です。基本控除の2800円((3万円−2000円)×10%)に、特例控除として所得税率10%の人は2万2400円、20%の人は1万9600円が加わります(計算式は(3万円−2000円)×(90%−所得税率)です)。ただし、住民税は毎月の納税額からの減額というかたちで戻ってきます。
所得税の寄附金控除と住民税の税額控除を合わせると、ふるさと納税で寄附した金額の9割程度が戻ってくるのでお得だといわれるわけですね。
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