インタビュー
» 2015年03月09日 09時00分 UPDATE

エンタープライズ・ソーシャルが働き方を変える:なぜ「メールじゃもう、ダメ」なのか――企業向けSNSが注目されるワケ

「メールよりLINEやFacebookでしょ」――個人間ではすでに浸透しているこうした流れが、企業にも押し寄せている。なぜ今、企業向けSNSが注目されているのか、その背景に迫った。

[Business Media 誠]
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 組織のあり方やワークスタイルの変革について語る際、「エンタープライズ・ソーシャル」(企業向けSNS)という言葉を耳にする機会が増えている。

 社員同士の情報共有のハードルが下がることで、自由闊達な議論が交わされるようになり、新たな価値が次々と創造され、生産性も向上する。さまざまな価値観を持つ人々が協力できる場が生まれ、社員はそれぞれの事情、状況に合わせた働き方が可能になる――といったエンタープライズ・ソーシャルの導入効果に期待する声が高まっているが、実際、それがどのようなものなのか、どう活用すれば成果を得られるのかといった問いに明確に答えられる人は少ないのが現状だ。

 なぜ今、エンタープライズ・ソーシャルが注目されているのか、製品選びや導入のポイントはどこにあるのか――。エンタープライズ・ソーシャルサービスを提供するビートコミュニケーションの代表を務める村井亮氏と日本マイクロソフトの日野成一郎氏の対談を通じてひもといていく。

エンタープライズ・ソーシャルが求められる背景

Photo ビートコミュニケーションの代表を務める村井亮氏

村井氏 今、エンタープライズ・ソーシャルが求められている理由は大きく3つあると考えています。

 1つはグローバル化。日本企業が海外に進出し、国内にもさまざまな国籍の人々が来日するようになり、多様な文化・風習をバックグラウンドに持つ人々が一緒に働くケースが増えています。

 2つ目は社会の少子高齢化。少子化による労働人口の減少に伴い、女性や高齢者の労働力に期待が寄せられています。

 3つめはの価値観の多様化。さまざまな価値観、職業観、仕事観を持った人々が増えています。

 こうした要因から、同じ組織であっても複数の文化が生まれ、働き方が多様化し、働く場所も分散するようになりました。いままでのような均一な働き方だけでなく、時短勤務や在宅勤務などさまざまな働き方が求められるになっているのです。

 そこで、多様なバックグラウンドの人々が時間や場所に関係なく情報交換を行い、交流を深め、互いの信頼関係を構築し、組織としての一体感を醸成したり、組織のビジョンやロードマップ・価値観などを共有するためのコミュニケーションの場所・プラットフォームとして、エンタープライズ・ソーシャルに期待が寄せられているのです。

 組織は、上記で示したような内的要因に加えて、ビジネス環境の変化という外的要因も抱えています。

 テクノロジーの進化、特に通信技術とそれに付随するシステムの急速な発達により、あらゆる情報が瞬時に共有されるようになりました。その量とスピードは日増しに増えつづけ、1つの専門分野であってもすべての情報をフォローするのが困難になっています。それにもかかわらず、社員は常に競争にさらされ、差別化を求められる中で次々と新しいイノベーションを生みだすことが求められています。

 昨日と同じことをしていたのは組織の価値を高められなくなっている昨今、組織は多様性を求め始めています。

 企業は売上面・収益面での効率化を求めて永らく活動をしてきました。その中で多様化を推進すればするほど、効率化と多様化の間に齟齬が生じるようになってきました。組織が多様になればなるほどマネジメントが複雑になってしまうのです。

 これまでは、部門単位でのマネジメントでよかったものが、多様化の時代になり、職位職階、所属部門、文化、国を越えたプロジェクトチームの結成などを支える「エンタープライズ・ソーシャル」の活用が求められるようになっています。

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Photo 日本マイクロソフトの日野成一郎氏

日野氏 労働環境が変化し、さまざまな働き方をする社員が増えているのは事実です。共働きで子育てしている人もそうですし、親の介護をしながら働く人も増えています。こういった社員の方々が力を発揮できるよう支援することが企業には求められています。その1つのキーになるのがエンタープライズ・ソーシャルだと考えています。

 多様化については、ミレニアル世代の活用というテーマが海外で話題になっています。ミレニアル世代というのは1980年代から2000年代初頭に生まれた世代を指しますが、この世代とこれより上の世代とでは育った時代の背景や価値観が大きく異なるため、現場での付き合い方から人事制度のあり方までが議論になっているといいます。このように多様化する社員同士が隔絶することなく、密接に連携できるようエンタープライズ・ソーシャルの活用を推進する企業も出てきています。

 さらに、日本の労働生産性がOECD加盟34カ国中21位と決して高くない状況にあることもエンタープライズ・ソーシャルに注目が集まる理由の1つです。先進7カ国では19年連続最下位に低迷しており、米国の労働生産性を100としたときの日本の労働生産性は63.4にとどまっています。

Photo 低い日本の労働生産性

 業種や計算方法によって違いがあるので一概には言えませんが、製造業の生産現場では「カイゼン」に代表される創意工夫によって生産性が相対的に高いと言われている一方で、サービス業や、同じ製造業でも現場以外の営業や管理業務などでの生産性が低いと言われています(参考資料:内閣府 厚生労働省の資料より「産業別生産性の動向等について」)。

 こうした背景から、さまざまな業種・職種でエンタープライズ・ソーシャルを活用して業務効率・業績向上を目指す企業が増えており、成功事例も生まれています。

村井氏 例えば、当社の顧客である三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは、労働生産性を高めるためにエンタープライズ・ソーシャルツール「Beat Shuffle」を使っています。アイデア出しのブレストから議論をまとめるところまで活用しており、質の高いナレッジの創出に一役買っています。また、趣味や関心事をテーマとするコミュニティでは交流の促進に役立てており、立場や地域を超えたつながりが生まれています。

 さらにソーシャルツールの活用が、プロジェクト期間を半分にするという“時短”にもつながった例もあります。この会社は、プロジェクトメンバーが一堂に会するのが難しい中、タイムライン上で過去の経緯の共有やテーマごとの議論を行ったそうです。その結果、成果物のイメージや意見に対してそれぞれがコメントや「いいね!」をつけるなどして、メンバーが共通認識を持ちながらタスクを進行でき、プロジェクト期間を短縮できたといいます。これは、情報共有と時系列表示の特性を活かし、物理的・時間的な制約を超えて仕事ができた好例と言えます。


 次回はエンタープライズ・ソーシャルが企業にもたらすメリットについて解説します。

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