深刻化する宇宙の「ゴミ問題」宇宙ビジネスの新潮流(2/3 ページ)

» 2015年09月18日 14時16分 公開

あわや国際宇宙ステーションにデブリが衝突

 直近の衝突未遂事件は2015年7月に起きた。ISSに対してデブリが衝突する可能性があるとの事前予測がなされたが、PDAM(Pre-Determined Debris Avoidance Maneuver)と呼ばれる事前回避行動が間に合わなかったため、滞在していた3人の宇宙飛行士がISSに係留してあるソユーズ宇宙船へ緊急退避した。幸いなことにデブリはISSから3000メートル付近を通過し、衝突は免れたことで、宇宙飛行士は通常作業に戻ったという。

 NASAによると、ISSに対して年間で数十回ほどデブリ衝突警報を発しているが、予測には不確定要素が多く、今回のように宇宙飛行士が緊急退避する事態になったことも過去に4回あるという。今回接近したデブリは1979年に打ち上げられた旧ソ連の衛星「ミチオール2」の破片であったと言われている。実に30年以上も前の人工物体がデブリとなって宇宙をさまよい、ISSなどの脅威となっているのは驚きだろう。

デブリを監視する米軍

 こうしたデブリの危険性は1980年代から指摘されてきたが、これまで大きな対策は取られてこなかった。その流れが変わったのが、先ほど紹介した2009年の衛星衝突事故であり、その結果、デブリの「監視対策」が加速した。

 それを担う機関が、USSTRATCOM(米国宇宙戦略軍)傘下のJSpOC(統合宇宙運用センター)だ。同組織の2015年予算は約7400万ドルに達し、24時間無休で1100機の運用中衛星を含む、約2万2000個のデブリ監視を実施しているのである。

 また、Space-Track.orgという公共的な情報サービスを通じて、軌道中の衛星に対するデブリ接近分析を行い、接近の可能性がある場合には衛星運用者に連絡するサービスを行っている。本サービスには世界156カ国から2万5000人が登録しており、緊急デブリ接近情報によってこれまでに85回の軌道制御が運用者により行われた。ただし一方で、こうした軌道制御によるデブリ回避は寿命設計外の燃料を使い、人件費もかかるため、コスト面で課題が多い。

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