近年はデブリ対策の方向性が、監視から「積極的に除去」する動きへと変わりつつある。JAXA(宇宙航空研究開発機構)では導電性テザー(関連リンク)を用いたデブリ除去方式の研究を進めている。ESA(欧州宇宙機関)でも2012年ごろからデブリ除去を目指したミッション「e.Deorbit」を開始しており、2021年にデブリ除去衛星を打上げる計画だ。
こうしたデブリ除去は、国や公的機関だけではなく、宇宙ベンチャー企業による取り組みも加速している。今注目を集めているのが、日本人の岡田光信(Nobu Okada)CEO率いるAstroscaleだ。シンガポールに本社を構える同社は、デブリ除去衛星の開発を進めており、2017年末までに世界初のデブリ除去の実証を行うことを目指している。
2015年1月には資金調達として、大手ベンチャーキャピタルのジャフコおよび、山岸広太郎氏、笠原健治氏をはじめとする9人のエンジェル投資家により、総額9億円の第三者割当増資によるシリーズAファンディングを行った。Astroscaleは今回の資金調達により、東京にデブリ除去衛星の開発・製造拠点を設立した。
このように活発化しているデブリ対策だが、課題も多い。
先日、東京大学で開催された宇宙開発フォーラムでは、「スペース・デブリ除去事業の展望」というパネルディスカッションが行われ、JAXAの竹内悠氏、NEC宇宙システム事業部兼慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科の大塚聡子氏とともに、筆者も登壇させていただく機会があった。そこで指摘された課題は、法律面および政治面での国際的枠組みとビジネスモデルである。
法的にはCOPOUS(国際宇宙空間平和利用委員会)でデブリに対するガイドラインが示されているが、拘束力は現時点ではない。各国の利害も複雑に絡み合うため、国際的な枠組みを短期間で合意することは容易ではない。またビジネスモデルの観点では、誰がどのようなスキームで資金負担するかが課題なのである。
過去に多くのデブリを排出した米国、ロシア、中国や、今後宇宙活動を活発化させる新興国、さらには数百機規模の小型衛星インターネット網の構築を目指す米Google、米SpaceX、米OneWebといった民間企業など、多様な主体がある中で、デブリ除去のためのコストを誰がどう負担するのか、明確なビジネスモデルを描くことが求められる。今後の展開を注視していきたい。
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