自動車業界はフォルクスワーゲンの排ガス不正問題で持ちきりだが、議論のみならず報道を見ていてもいろいろと誤解が多い。今回はディーゼルの仕組みと排ガス規制の問題を整理して、問題の本質をもう一度考え直してみたい。
まずはディーゼルエンジンの存在意義についてだ。クリーンディーゼルと言われながらも、実はディーゼルエンジンの排気ガスはガソリンエンジンよりずっと汚染物質が多く含まれている。クリーンというのはあくまでもこれまでのディーゼルエンジンと比べての話なのだ。しかし、それでもディーゼルが重要視されてきたのは、二酸化炭素(CO2)の排出が少ないからだ。
1997年の気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3、京都会議)において、史上初めて京都議定書で批准各国のCO2排出量目標が提議された。併せて排出枠の貸借りや、売買が提案され、従来の罰則方式でなく自由経済的なインセンティブ付与を積極的に利用してCO2を削減する方法が模索された。簡単に言えば、真面目に削減した国には金銭的なご褒美があり、不真面目な国はその分ものいりになる。
他国では難しい改善に成功すれば需給バランスによってインセンティブ相場が上がり、どこの国でも簡単に削減できればコモディティ化して相場が崩壊し、無価値になる。そして、そのときにはCO2削減目標は達成されているというわけだ。
CO2取引は新時代の果敢な取り組みと言えたが、同時に巨大なCO2枠利権を生み出すことが予想された。この利権を主導したのがEU、とりわけドイツだ。その結果、EUでは自動車の排出ガスを削減するため、所有者に対しクルマのCO2排出量に応じた課税を行い、加盟各国のCO2枠を余らせて有利に立とうとしたのである。
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