日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。
先週、「アリさんマークの引越社」と訴訟中の社員が加入している「プレカリアートユニオン」が、ネットにあげた映像が話題になった。
「何をぬかしとるんや、コラァ!」
「ワレェ! 謝ったらなにしてもええんか?」
ビジネス街ですごむスーツ姿の男性たち。周囲が「そういう言い方はやめたほうがいい」などとなだめるも聞く耳をもたずメンチをきる――。このシーンだけを見ると、Vシネ的ソッチ系の方たちが、一般市民にからんでいるように見えるが、そうではない。
プレカリアートユニオンとその上部団体である全国ユニオンが、東京・日本橋にある「関東引越社」前で昼休み時に拡声器で街宣活動を行っていたところ、周囲に迷惑だからやめるようにと言いに来た「引越社の幹部」で、そのなかのおひとりが撮影者に足を踏まれたことで激昂(げきこう)されてしまった場面なのだ。
実際にその場でどういうやりとりがあったのかというのは、双方で主張が食い違うだろうが、ネット上ではすでに「まるでチンピラ」「酷い会社だ」などと厳しく批判されている。アリさんマークの引越社は引越業界の顧客満足度調査でも首位や上位にランクインしているが、今後はブランドイメージの低下は免れないだろう。
そんなの自業自得じゃないかと思うかもしれないが、今回は引越社側のオウンゴールというよりも、それを誘ったプレカリアートユニオンの「作戦」が見事当たったという印象のほうが強い。
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