今知るべき国際情勢ニュースをピックアップし、少し斜めから分かりやすく解説。国際情勢などというと堅苦しく遠い世界の出来事という印象があるが、ますますグローバル化する世界では、外交から政治、スポーツやエンタメまでが複雑に絡み合い、日本をも巻き込んだ世界秩序を形成している。
欧州ではかつて知的な社交場を“サロン”と呼んだが、これを読めば国際ニュースを読み解くためのさまざまな側面が見えて来るサロン的なコラムを目指す。
フランスで11月13日に発生し、世界を震撼(しんかん)させた同時多発テロ(関連記事)。過激派組織イスラム国(IS)のテロリストがフランスの日常を襲い、少なくとも129人が死亡する事態となった。テロ直後に発令された非常事態宣言はさらに3カ月延長され、フランスでは現在もテロリストをあぶり出す強制捜査などが続いている。
そして今、世界の主要軍事国がイスラム国への掃討に本腰を入れようと話し合いを続けている。フランスは報復として空爆を強化し、今後は、シリア問題で立場の分かれる米国とロシアに対イスラム国で共闘するよう促しながら、NATO(北大西洋条約機構)との協力も進めていくとみられている(ちなみに米ロ仏は軍事予算額でそれぞれ世界トップ5に入る)。
日本のテレビを見ていると、今回のテロについて、「報復がさらなる報復を呼ぶ」「暴力が生み出すのは暴力のみ」といった耳障りのいい意見をよく聞いた。一方で、米英系のメジャーなニュース番組からはそうした意見はあまり聞こえてこない。どちらかといえば、これからどうイスラム国と戦っていくか、ということに焦点が置かれている。
特に欧米の専門家らの多くは、容赦ない殺戮(さつりく)やテロを行うイスラム国のような組織は、周囲への被害を最小限にとどめながら、武力によって壊滅させるより他ないと考えているようだ。そしてテロを減らした上で、テロの温床となる負の要素を取り除いていくしかない、と。
ところが最近、そんな考えに真っ向から疑問を呈すような報告書が発表された。11月17日に公表され、海外でも話題になっているこの報告書から、改めてイスラム国にどう対処すべきかを考えてみたい。
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