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試される鉄路、北海道新幹線は「本当はできる子」杉山淳一の「週刊鉄道経済」 2016年新春特別編(1/5 ページ)

» 2016年01月02日 06時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP


盛り上がりに欠ける北海道新幹線

 北海道新幹線は新青森と新函館北斗を結ぶ。札幌延伸は2031年の予定で、あと15年もかかる。けれども、私が訪れた2015年11月の札幌駅では「3.26開業」の大きなポスターがいくつも掲げられ、開業ムードが伝わってきた。札幌ではもう1つ、12月20日に市電のループ化開業もあった。新幹線開業と市電ループ化に期待する人々は、私のような鉄道ファンだけではないだろう。新路線開業の話題には心が躍る。

 新幹線の開業は2015年3月の北陸新幹線金沢延伸(関連記事)に続いて2年度連続になる。だからどうしても比較してしまう。北海道新幹線が北陸新幹線に比べて盛り上がりに欠けているのではないか、そこが気になる。北陸新幹線は東京〜金沢間を約80分も短縮し、航空便と互角に競える所要時間を達成した。おかげで営業成績も好調だ。特にJR西日本の「大入り袋」は話題になった。2015年9月中間決算で、前年同期比34.5%増の営業成績を達成した。正社員に5万円、契約社員に3万円が支給されたという。今まで東京と北陸を結ぶルートだった第3セクター「ほくほく線」の乗客がごっそり移転してくれたおかげだ。

 沿線への観光、産業面の効果も目立った。金沢・富山とも山海の美味があり、観光地、景勝地に恵まれている。JR西日本とのと鉄道は観光列車を続々と投入して好評だ。産業面ではYKKなど企業の大型移転もあった。石川県、富山県とも企業誘致が活発だ。首都圏や東海からの企業移転と、政府が進める地方再生政策がリンクしている。

 道南地域の人々には申し訳ないと、はじめにお詫びしてしまうけれど、北陸新幹線の賑わいに比べると、北海道新幹線は地味な印象だ。東京〜新函館北斗の所要時間は4時間を超え、1時間20分の航空便とは勝負にならない。企業移転の大型案件も聞こえてこない。

 鉄道ファンとしては観光列車を走らせてほしいところだけど、JR北海道の施策はその真逆だ。たび重なる事故と不祥事、社長の自殺など不穏な状況を受け、在来線の安全強化と新幹線への「選択と集中」の最中だ。新函館北斗と函館を結ぶ「はこだてライナー」と、函館・新函館北斗と札幌を結ぶ特急「北斗」「スーパー北斗」が増発されて便利になるけれど、函館駅と有名駅弁「いかめし」発祥の森駅を結ぶ「SL函館大沼号」は2014年を最後に運行終了。蒸気機関車は東武鉄道に貸し出される(関連記事)。各地で魅力的なローカル路線も減便計画が進められている。北海道新幹線は楽しみだけど、その先に楽しみがない。

 新幹線開業を機に立ち直りたいと頑張っているところで、2015年12月27日に函館本線でトンネル火災が発生。12月29日まで深川〜旭川間が不通となった。JR北海道では千歳空港を含めた札幌都市圏輸送と、札幌〜旭川間の特急列車が収入の柱のはず。その大黒柱が焦げ付いた。

 企業体質など積もり積もった原因があるとはいえ、ここまで来ると悲運としか言いようがない。ずいぶん前に流行った「天中殺」ではないか、と勘ぐりたくなる。試しにJR北海道設立年月日で天中殺を調べたところ、2015年ではなかった。しかし安心してはいけない。2016年と2017年が天中殺らしい。もう泣きたくなってくる。ちなみにJR北海道とほかのJR旅客会社、JR貨物も同じ日に発足しているわけで、各社とも引き締めて業務に臨んでほしい。

札幌駅コンコース、いくつかの目立つ場所に北海道新幹線開業ポスターが掲出されていた 札幌駅コンコース、いくつかの目立つ場所に北海道新幹線開業ポスターが掲出されていた
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