LINE元CEO・森川亮が考える起業家に必要な資質とは?(1/2 ページ)

» 2016年01月07日 07時00分 公開
[森川亮The First Penguin]
The First Penguin

いい起業家と普通の起業家の差

 「起業家にとって何が大事なのか」という質問をよく受けます。起業家になる人たちはやはり、やりたいことがいっぱいある人が多いのですが、結局全てはできない。

 では、何からやったらいいのか? それは「何を削るのか」を考えるといいと思います。考える際に有効なのは、素朴な疑問から考えることです。例えば、売り上げとサービスとどちらが大切なのかとか、そういう疑問です。その答えは自分の中にあるはずなので、それを整理するんです。結局、何をやるか絞れない人は、普通の起業家にしかなれません。

 例えば利益率が5%、成長率も5%、という規模の事業があったとします。そして、その事業をやっている人たちは、みんな楽しくやっていたとします。

 そういう事業を、本当に事業として認めるかどうかが、いい起業家と普通の起業家の差です。利益が出ているからといって、認めるのは普通の起業家です。多分、その事業の先に新しい未来はありません。

 それをやめてでも、成長分野に投資するような判断をできるかどうか。それができない企業は、ベンチャーではなく、普通の中小企業です。特に日本のような成熟した国で世の中を変えるような動きを作るためには、利益率50%ぐらいの事業か、もしくは赤字の事業か、どちらかで勝負をかけてほしい。

 もちろん、きちんと利益が出ていて、みんな楽しくやっている事業をやめるという判断をすれば、当然、現場の社員に嫌われます。

 私もLINEにいたとき、他社に事業譲渡をするときなど、昔はよく社内から不満の声が聞こえてきたり、嘆きのメールが送られてきたりしました。(なので、僕は社員に会わないようにしたんです。会ってしまうと情が移り、冷静な判断ができなくなってしまうからです。もちろん会社が小さいうちからそんなことをやっているとみんな会社をやめてしまうので、大きくなってからですが)

 そのためにはやはり、信念(明確な目標)を持っていなければ、多少なりとも利益がでている事業をやめるという判断はできません。結局、起業家にとっては、「起業の目標が何なのか」が重要なんです。

 ただし、起業は多くの人を巻き込むことになるので、自分の金もうけのために起業するのだけはやめたほうがいい。賢い人ならば、1人でデイトレとかをやってもらった方がよっぽどもうかります。

photo (写真はイメージです)
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