街中にあふれる「公害コピー」をなくす方法こだわりバカ(2/5 ページ)

» 2016年02月22日 08時00分 公開
[川上徹也ITmedia]
「優先席の前では携帯電話の電源をお切りください」というアナウンスが流れても、携帯の電源をわざわざ切る人はほとんどいない(写真はイメージです)

 これらの啓発ポスターや車掌のアナウンスはまったくと言っていいほど効果をあげていないのだ。なぜこんな風景がいたる所で繰り広げられているのだろう? 

 言うまでもないが、マナーを守らず危険な行動をしている利用者にも非がある。これは大前提だ。しかし、それだけが問題なのではない。伝える側の鉄道会社の責任も大きい。ただ「伝えた」ことだけでよしとしているからだ。伝えはしているけれど、まったく効力を発揮していない。これでは伝えていないのと同じだ。むしろ、過剰に伝える過ぎることで、利用者側の聞く耳をふさがせ心を閉じさせる方向に向かわせている。逆効果にしかなっていないのだ。

 例えば、あなたは小さいころに親から「勉強しなさい」と言われなかっただろうか? 言われた覚えがある人は、その言葉で「勉強しよう」という気になっただろうか? やろうと思わないばかりか、むしろやる気を失ったという人が多いだろう。内容は確実に伝わっている。しかし、相手の行動に結びつかないばかりか逆効果になりかねない。これは伝える側の親に責任がある。

 つまりこういうことだ。人はたとえ伝わったとしても(そして言われた通り行動するのが正しいと分かっていても)その通りに行動するとは限らないということ。いやむしろ行動しない可能性のほうが高い。また正論であればあるほど、反発を招くことが多いのだ。

 発信側は「伝えただけでは0割」と思っておいたほうがいい。むしろ伝え過ぎるとマイナスになる場合が多い。発信者側は、常に受け手がちゃんと行動したくなるような言葉や伝え方を考える責任があるのだ。もちろんこれは鉄道会社に限らない。道路をはじめ街のいたる場所にも「公害コピー」としか思えない「無駄な言葉や標識」が氾濫している。発信する側は、「伝えればいい」という発想をぜひやめてもらいたい。

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