アップルが「iPhoneロック解除」に応じることができない理由世界を読み解くニュース・サロン(2/7 ページ)

» 2016年02月24日 08時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

捜査協力の要請に対し、アップルは拒否

 まず騒動のいきさつを見ていきたい。

 FBIが捜査しているテロ犯とは、2015年12月2日、カリフォルニア州サンバーナディーノで銃乱射殺人事件を起こして自らも死亡した男女2人のうちの男性だ。福祉施設を襲ってパーティー中の職員ら14人を銃で殺害し、22人を負傷させた痛ましい事件だった。

 FBIはこの犯人が、iPhone 5c(OSはiOS9)を使い、過激派組織「イスラム国」のメンバーと連絡を取り合っていた可能性を視野に入れている。さらに銃撃が誰か別の人物の指示だった可能性もあるとして、この事件そのものと、今後のテロ対策のために、どうしても携帯デバイスの情報にアクセスする必要があると裁判所に提出された資料で述べている(参照リンク)。米国は「イスラム国」をテロ組織指定しており、国民の安全のためにも、iPhoneの内部データへのアクセスは必要不可欠と主張する。

 FBIはまずアップルに捜査協力の要請をしたが、拒否された。そこでFBIはカリフォルニア州の裁判所に訴え、連邦治安判事がアップルに対してFBIに協力するよう命令を下した。その裁判資料の中でFBIは、「アップルは米政府に協力しなかったため、2016年2月16日に発行されたこの命令に従わせるほかない」と述べている。

 その命令に対し、アップルのティム・クックCEOは「ユーザーの皆様へ」というメッセージで反論。その中で「米政府はアップルに対し、自分たちの顧客をハッキングするよう求め、顧客のプライバシーを守るために私たちが何十年にわたり取り組んできたセキュリティの改良を台無しにする要求をしている……私たちは米政府による度が過ぎた要求に晒されて声を上げなければいけないと感じている」と主張した(参照リンク)。

ティム・クックCEOは「iPhoneロック解除」問題についてメッセージを発信した

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