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» 2016年04月04日 08時00分 UPDATE

始まった電力自由化 7.5兆円の“戦場”でいま何が起きているのか (1/2)

「電力自由化特集」第1弾では、複雑化する電力自由化の“戦場”の構図について、いま一度解説する。

[鈴木亮平,ITmedia]

 7.5兆円という巨大市場に向けて、競争が過熱している――。

 いよいよ電力小売り事業が2016年4月1日から全面自由化となった。現段階で、電力小売り事業に参戦する「登録小売電気事業者」の数が200社を超えるなど、競争が過熱している。本特集では、そんな電力小売り自由化をめぐる各企業の戦いを追いかけていく。

 その第1弾となる本稿では、まず、複雑化する電力小売り自由化の“戦場”の構図について、いま一度おさらいしておきたい。

 電力小売り自由化よってどんな戦いが起こっているのか、これから何が起ろうとしているのか――。電力業界で40年のキャリアを持ち、電力比較サイトを運営するエネチェンジの副社長、巻口守男氏に話を聞いた。

エネルギー系企業が目指すもの

 もともと電力小売りの自由化は2000年から段階的に進められてきた。最初は、工場やデパートなどの電気使用量が2000キロワットを超える「特別高圧」の顧客に対しての電力小売りが自由化され、2004〜2005年からは中小規模工場、オフィスビルなど、50キロワット以上使用する「高圧」の顧客に対しても自由化された。そして、いよいよ2016年4月からは一般家庭や小規模店舗にまで対象範囲が拡大し、全面自由化。解放されるその市場はなんと約7.5兆円にも上るのだ。

photo 電力小売り自由化の歴史

 この全面自由化を受けて、さまざまな企業が参入を表明している。巻口氏は、電力事業に参入する企業は大きく2つに分類できると説明する。

 一つ目は、ガス会社や石油会社、電力会社などの「エネルギー系」の事業者。例えば、東京ガスや東京電力、JXホールディングスといった企業だ。二つ目は、ソフトバンクやKDDIなどの通信キャリアや、ローソンなどの物販系の「非エネルギー系」事業者である。

 このエネルギー系と非エネルギー系では、電力事業に参入する目的は異なる。「エネルギー系」の参入の大きな目的は“総合型エネルギー企業”を目指すことにあるという。

 「電力自由化に続き、2016年はガスが自由化されます。エネルギー系の企業は、他のエネルギーにも参入することで、総合型エネルギー企業になることを目指しています。電力会社にとっては今年は競争の入口であり、来年から本格的な勝負が始まります」(巻口氏)

photo 巻口守男氏

 電力会社やガス会社が総合型エネルギー企業を目指す背景には、国内マーケットの縮小が理由に挙げられる。今後、人口が減り続ける中では、エネルギー市場の拡大は見込めない。国外に目を向け、新たな市場を開拓する必要があるのだ。

 「一電力会社や、一ガス会社では、世界で受け入れてもらえません。電気もガスも何でもできる総合型のエネルギー企業にならなければグローバルでシェアは取れないのです」(同)

 電力事業への参入、ガス事業への参入は各エネルギー企業が国内で総合型エネルギー企業として脱皮し、世界に進出するための重要なステップとなるのだ。東京ガスが名前を変更しようとしているのも、一ガス会社から飛び出していくという意図があるからだろう。

非エネルギー系企業は電気で利益を上げるつもりはない

 一方、エネルギーで利益を上げるエネルギー系に対し、非エネルギー系には“本業”が存在する。彼らが電力事業に参入する目的は、本業における新しい顧客の獲得や既存の顧客を囲い込むことにある。電力という商材はそのツールにすぎないのだ。

 「非エネルギー系の企業は、電力事業で利益を上げようとは考えていません」(同)

 例えば、ソフトバンクやKDDI、NTTドコモなどの通信キャリアであれば、電力と携帯料金のセット割を提供し、ローソンは電力使用量に応じてPontaポイントと付与することで既存顧客を囲い込み、新規顧客開拓にもつなげる。他にも、ジュピターテレコムでは、ケーブルテレビ「J:COM(ジェイコム)」の加入者を対象にした電気料金の割引きサービスを、東急パワーサプライは、東急線沿線に住んでいる250万人を対象にした電力サービスを提供する。

 こうして、非エネルギー系の企業各社は本業の顧客を獲得するため、電力という商材を自社サービスの付加価値向上につなげて、うまく利用しているのだ。

 狙いや目的に違いのあるエネルギー系と非エネルギー系だが、両者は連携の動きを強める。非エネルギー系は発電所を持っていないため、商材の調達先としてエネルギー系との提携が必要だ。逆にエネルギー系は、非エネルギー系と連携することで全く新しい販売網を築くことができ、拡販することができるというわけだ。さまざまな企業が連携する動きは、これからも出てくるだろう。

photo (出典:エネピより
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