ISとアルカイダが合併? 最恐テロ組織が誕生する可能性世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)

» 2016年06月02日 08時12分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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アルカイダのメンバーなどが入り込む可能性

 さらにはもう1つ不穏な動きがある。リビアで、ISとアルカイダ、そしてエジプトのイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」が手を組むべく交渉が続いているというのだ。ロンドンで発行されるアラビア語日刊紙『アッシャルクル・アウサト』が、ムアンマル・カダフィ大佐が殺害されてからずっと混乱の続くリビアで、3組織がリビア政府と対抗するために「巨大な合併」をすると報じている。

 こうした動きは、どこまで日本に関係があるのだろうか。どれほどの脅威となるのか。

 2001年の米同時多発テロの起案者でアルカイダのナンバー3だったハリド・シェイク・モハメドは、かつて静岡で暮らしたこともあるが、彼の証言によると、アルカイダは多くの外国人が訪れるサッカー日韓W杯でテロ攻撃を狙っていた。また同時多発テロ後にアルカイダにメンバー数名が何度も日本に入国し、新潟に潜伏していたこともある。

 これまで日本では、アラブ系など外国人は絶対数が少なく、公安当局などもチェックをしやすかったし、テロは実行しにくいとみられていた。またハリド・シェイク・モハメドによれば、サッカーの日韓W杯へのテロ攻撃を最終的に断念した理由は、日本でイスラム教徒の協力者を見つけられなかったからだという。しかし最近では外国人観光客を増やすために訪日ビザ(査証)の要件が緩和され、テロリストや犯罪者などからしてみれば、以前よりもまぎれ込みやすくなっているだろう。そう考えれば以前よりリスクは高くなる可能性がある。

 誤解のないように言っておくが、イスラム教徒はテロリストとイコールではない。著者にもイスラム教徒の友人はたくさんいるが、多くは勤勉で穏やかで、聖戦やテロ行為を軽蔑している。ただ過去の例からも、アルカイダのメンバーなどが入り込む可能性は否定できないということだ。

 そして日本では、訪日外国人が劇的に増え、サッカーW杯並みに多くの外国人が集まる東京五輪を控えている。ISとアルカイダが手を組むことがあれば、日本にとってもかなりの脅威になることは間違いない。大方は現時点で両組織が手を組む可能性はそう高くはないと見ているし、また両組織は結託せずともそれぞれが十分に危険であることは変わらないが、いずれにしてもその動向は要チェックだろう。世界で最も悪名高い2つのテロ組織が一緒になって日本に惨事をもたらさないよう警戒しておくに越したことはない。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 ノンフィクション作家・ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト研究員を経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。


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