業界首位を守り続けるマツキヨの“強み”とは高井尚之が探るヒットの裏側(1/3 ページ)

» 2016年06月06日 08時00分 公開
[高井尚之ITmedia]

高井 尚之(たかい・なおゆき/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)

日本実業出版社の編集者、花王の情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の本音の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。

「カフェと日本人」(講談社現代新書)「セシルマクビー 感性の方程式」(日本実業出版社)「『解』は己の中にあり」(講談社)「なぜ『高くても売れる』のか」(文藝春秋)「日本カフェ興亡記」(日本経済新聞出版社)など著書多数。 E-Mail:takai.n.k2@gmail.com


 マツモトキヨシの2016年3月期の決算発表まで、各メディアは「20年ぶりに業界首位が交代の見通し」と報じていた。業界2位のウエルシアHDが積極的なM&A(吸収・合併)を行い、長年首位のマツモトキヨシHDを上回ると予想されたからだ。

 結果は、マツモトキヨシHDの年間売上高が5360億5200万円、ウエルシアHDが5284億200万円と、マツキヨが首位の座を死守した。同社の売上高は対前年比110.4%にまで伸びたのだ。

 今回は、同業界について解説しつつ、業界首位を守り続けるマツモトキヨシの顧客獲得の手法を分析してみたい。

 ドラッグストアは、一般的には売り場面積を広くとり、幅広い商品をそろえて顧客に訴求する。入口ドアがないので入りやすいのも特徴だ。基本は洗剤やティッシュペーパーなどの日用品や雑貨、そして食品を安く販売してお客を呼び込み、医薬品と化粧品の販売で利益幅を高めるビジネスモデルだ。ただし「調剤薬局型」や「食品重視型」など各社によって戦略が異なる。

 例えば、スギHDは調剤薬局型の代表的存在だが、コスモス薬品は社名とは裏腹に、全売上における食品売上比率が5割を超える食品重視型だ。

 かつてはペットボトル飲料が中心だった食品売場は近年、冷凍食品や菓子など品ぞろえが多様化している。これまで筆者が取材した競合店の中には、大手メーカーの瓶ビールを格安で取りそろえた店もあり、「飲食店関係者らしき人がまとめ買いされるケースもある」(同店スタッフ)という声も耳にした。この手の店は、食品スーパーの代わりとして地域住民が利用する店も多い。

 これに対してマツモトキヨシが掲げる戦略は「HBC」(ヘルス&ビューティーケア)だ。医薬品、化粧品、トイレタリー商品といった健康・美容関連商品が全売上高の7割を占める。

photo マツモトキヨシ新松戸駅前店
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