大物IT起業家がハルク・ホーガンを利用してメディアを潰しにかかったワケ世界を読み解くニュース・サロン(3/5 ページ)

» 2016年06月16日 08時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

ホーガンの背後に大物

 そしてゴーカーや関係者は、ホーガンの背後に大きな後援者がいると見ていた。すると2016年3月に判決が下されてから、米メディアがホーガンに密かに資金援助していた黒幕の存在を暴露した。

 その人物は、日本でも2015年ビジネス本大賞を受賞した『ゼロ・トゥ・ワン―君はゼロから何を生み出せるか』(NHK出版)の著書で知られるシリコンバレーの大物投資家ピーター・ティールだ。ティールは、ゴーカー側からの1000万ドルの示談提案を受けさせないために、ホーガン側に弁護費用など少なくとも1000万ドル近い支援金を支払っていると報じられている。ホーガンの強気な姿勢の背景にはそうした後ろ盾があったのである。

 ティールといえば、オンライン決済サービス「PayPal」の共同創業者であり、FacebookやLinkedInなど大手SNSに初期から投資をしてきたことでも知られるシリコンバレーの大物投資家だ。Facebookについては、サービス開始から今までずっと取締役を務めており、ティール個人の総資産は27億ドルにもなる。

 ティールの存在が明らかになったことで、この裁判は「表現の自由」や「プライバシー侵害」といった話を超えた騒動になっている。というのも、ティールがホーガンに多額の資金提供をした理由には、ゴーカーに対する私怨があったからだ。

 どういうことかというと、ゴーカーは2007年12月に、ティールについて次のようなタイトルの暴露記事を掲載した。

 「みなさん、ピーター・ティールは完全なゲイですよ」

 この記事でゲイであることを大々的に報じられたティールは憤慨した。するとティールは弁護士のチームを組んで、ゴーカーを追い詰めて仕返しするために、自分と同じようにゴーカーの被害者となっている人を探した。「報復というよりは、限定的な抑止力だ」と、ティールはホーガンへの支援が暴露された後に米ニューヨークタイムズ紙に語っている。「ゴーカーは一般市民が関心のないことですら、人々をいじめて注目を浴びるために、信じられないような独特で破壊的な手法を始めていた」

 そしてこうも主張している。「(ゴーカーは)反撃に価すると思った」

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