コラム
» 2016年07月28日 06時00分 UPDATE

初代『ポケットモンスター』と「ポケモンGO」、2つの熱狂の共通点とは? (1/2)

大ヒットしている「ポケモンGO」。その熱狂は、初代『ポケットモンスター 赤/緑』に夢中になっていた頃を思い出す。当時を振り返って見えてきた、初代『ポケモン』と「ポケモンGO」の共通点とは?

[青柳美帆子,ITmedia]

 2016年の夏の話題を一身に集めている「Pokemon GO(ポケモンGO)」。「ポケモンGO」をプレイしている(もしくは、プレイできない)キッズたちにとって、今年の夏は特別なものになることは間違いない。

 1990年生まれの筆者にとっては、小学校に入学した97年がまさに“特別な夏”だった。97年4月から始まったアニメ『ポケットモンスター』(以下、ポケモン)で人気に火がつき、給食の時間、掃除の時間、休み時間、放課後に至るまで、みんながポケモンの話をしていた。6月にCDが発売されるとすぐに買いに行き、B面の「ポケモン言えるかな?」を暗記した。私たちの世代は、九九よりも早く151匹のポケモンを覚えたのだ。

1996年に発売され、爆発的なブームとなったゲーム『ポケットモンスター』。画面は白黒だ(出典:任天堂Webサイト)

 リアルタイム世代にとって、熱狂は“美しい思い出”で、あの時何が起こっていたのかは分からない。しかし、「ポケモンGO」がリリースされた16年から当時を振り返ると、あの頃には見えなかったことが見えてくる。

 発売当時のポケモンブームをまとめた本、ポケモンビジネス研究会発行の『ポケモンの秘密』(小学館文庫)から、当時のブームと「ポケモンGO」の共通点を探ってみよう。

日本を代表するIPは「口コミ」で広がった

 「ポケモンはピカチュウのイメージしかない、アニメが元なの?」と思っている人も多いかもしれない。この作品の始まりは1996年に発売されたゲームボーイソフト『ポケットモンスター』。ソフト制作はゲームフリーク、代表取締役の田尻智さんがディレクターを務めた。

 赤と緑の2タイプが同時発売された『ポケモン』の定価は各3900円(税別)で、初回出荷は23万本(赤13万、緑10万)。当時はゲーム業界が元気だったので、これだけの売り上げでも「大成功」とは言いづらい。

 しかし『ポケモン』は、市場に出てから売上本数が大きく伸びた。伸びた要因は“口コミ”。当時「演歌のよう」と称されたようにじわじわと広がり、96年夏に100万本を突破した。

「赤」と「緑」の2タイプが同時発売された『ポケモン』。口コミで売り上げを伸ばしていった

 別バージョンの「青」(限定版)も96年10月に発売。一気に60万の予約が集まり、生産はパンクした。小学生だった私が「赤」を買ってもらえたのは97年の夏だったが、半年以上経過してもなお品薄状態が続いていたのを覚えている。

 盛んにメディアミックスを行った本作は、アニメやコミック、ポケモンカード、玩具などさまざまに展開していった。その影響を受けてポケモンブームは過熱し、ゲームの売り上げも伸びていく。「青」「ピカチュウバージョン」を加えれば、現在までの累計販売本数は国内1300万本、世界4600万本を超える。

 他ハードでの発売ソフトも含めた世界でのシリーズ累計販売本数は2億本。スクウェア・エニックスの『FINAL FANTASY』シリーズが1億本、任天堂の『マリオ』シリーズが5億本であるから、日本を代表する巨大なIPに成長したことは疑いようがない。

“通信”要素からの逆算で生まれた『ポケモン』

 『ポケモン』は、当時の携帯型ゲーム機の“王者”であった「ゲームボーイ」用ソフトとして生まれた。1989年に登場したゲームボーイは、大きさが15センチ、起動には単三電池が4本も必要で、明らかに子どもの手にはデカかった。その一方、子どもが落としても壊れない頑丈さが売りだった。

 ゲームボーイの特徴は、“通信ケーブルの端子がついている”こと。別売りの通信ケーブルで友達のゲームボーイと接続して対戦ができる。ファミリーコンピュータ(ファミコン)は「子どもが家にこもってしまって、友達とコミュニケーションをしない」といった苦言があったようで、ゲームボーイは機能からしてコミュニケーションが生まれる仕組みを作ろうとしていたのだ。

こんなケーブルで接続していた

 しかし、発売されてしばらくは、通信機能はほとんど活用されていなかった。そもそも、ゲームボーイで人気だったのは自分のペースでできるパズル系のゲームで、通信対戦需要があまりない――といった面もあったようだ。

 『ポケモン』は、この通信ケーブルからの“逆算”で生まれたのだという。田尻さんはゲームのアイデアのブレインストーミングで、このように発言したそうだ。

 「対戦するだけじゃなくて、ゲームの中で集めたもの、お金とか、アイテムみたいなものを通信ケーブルをつかって自分から友達へ、友達から自分へと交換するような遊びを作ったら面白いんじゃないかな」

 “交換”は、昆虫採集から生まれたアイデアだ。少年時代の田尻さんは、野山で虫を採り、川で魚を捕まえて、成果を友達に自慢したり、交換したりするような少年時代を過ごしたのだという。「子供の頃にやった昆虫の交換を現代の子供でも体験できる」――そこから、誰もが一度は体験するであろう“キャラクターカードのコレクション”という要素を加え、『ポケモン』が組みあがっていった。

 世界を冒険して1番強いやつと戦いに行くというRPGのストーリー、「ポケモン図鑑」を埋めるというコレクション要素、自分の相棒としてポケモンを育てていくという育成要素。そしてさらに、友達とポケモンを交換したり、育てあげたポケモンを戦わせたりできる通信要素。それらがかみ合った作品が『ポケモン』だ。

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