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» 2016年08月12日 06時30分 UPDATE

杉山淳一の「週刊鉄道経済」:夕張市がJR北海道に「鉄道廃止」を提案した理由 (1/5)

JR北海道が今秋に向けて「鉄道維持困難路線」を選定する中、夕張市が先手を打った。市内唯一の鉄道路線「石勝線夕張支線」の廃止提案だ。鉄道維持を唱える人々は「鉄道がない地域は衰退する」「バス転換しても容易に廃止される」という。夕張市の選択はその「常識」を疑うきっかけになる。

[杉山淳一,ITmedia]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP


冬の北海道・石勝線支線。終点の夕張駅に隣接してスキーリゾートがあり、鉄道で訪れる若者もいる。ただし、冬期は新千歳空港などからスキーバスも運行されている 冬の北海道・石勝線支線。終点の夕張駅に隣接してスキーリゾートがあり、鉄道で訪れる若者もいる。ただし、冬期は新千歳空港などからスキーバスも運行されている

 7月29日、JR北海道は記者会見を開き、「持続可能な交通体系のあり方について、地域の皆さまに早急にご相談を開始させていただきたい」と発表した。同日、自社サイトに詳しい意見書とスライド原稿を掲載した。

 趣旨は「JR北海道が北海道における重要な基幹交通機関であり、地域の交通手段の重要性を認識した上で、経営状況の悪化と沿線の過疎化を踏まえて、今後の交通問題を沿線自治体に相談したい」である。

 スケジュールとしては、秋までにJR北海道が「自社単独で維持できる線区」と「自社単独で維持できない線区」の振り分けを発表する。その上で、「自社単独で維持できない線区」の自治体に対して、上下分離やバス転換などを地域へ提案する。「自社単独で維持できる線区」についても、JR北海道は駅や列車の削減や運賃値上げを実施する方針だ。つまり、自社単独とは言いつつ、沿線自治体の支援や譲歩は不可欠である。

 JR北海道の過去の発表によると、黒字の路線は札幌近郊の限られた線区のみ。自社単独で維持できる線区は、条件付きで維持できる線区という意味で、もう少し範囲は広くなりそうだ。いずれにしても、JR北海道は声高らかに「非採算線区の切り離し」を宣言したわけだ。北海道の鉄道沿線自治体は“秋の決定”をハラハラしながら待っている。

 そうした中、JR北海道の動向の先手を打って動いた自治体がある。名寄市など宗谷本線の沿線20市町村で作る「宗谷本線活性化推進協議会」は、7月25日に北海道議会など4カ所、同27日には国土交通省鉄道局へ鉄道存続の要望書を提出した。宗谷本線は旭川と稚内を結ぶ幹線である。稚内駅は日本最北端の駅。稚内市は人口約3万6000人。ロシアとの交流もある。

 宗谷本線は札幌発着の特急「スーパー宗谷」2往復、「サロベツ」1往復があり、道北の背骨と言える。それでも沿線自治体の危機感は大きい。JR北海道は昨年から普通列車の減便や特急列車の札幌乗り入れ廃止など合理化の方針で、宗谷本線活性化推進協議会の現状維持の要請に対して「資金不足」の一点張りだった。

 「○○本線」と名の付く幹線でさえこの状況である。いまや札幌圏を除き、北海道で線路を持つ自治体すべてが、鉄道を失うという危機感を抱いている。

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