大隅線廃止以降、鹿屋市は衰退しただろうか。統計情報によると、大隅線が廃止された1987(昭和62)年の人口は10万2653人。最新の2014(平成26)年の人口は10万4077人。衰退どころか微増となっている。世帯数は3万7090から4万5641と大きく増えている。これは核家族化や、高齢化による独居老人増もあるかもしれないから、若者単身世帯の増加だけではないだろう。とはいえ、この数字は、大発展したとは言えないけれども衰退はしていないという事実を示す。前述のように産業も堅調で、食糧自給率は100%を超える。鉄道がなくても鹿屋市は維持できている。
もちろん、鹿屋市と夕張市は環境が違いすぎるから同列には語れない。しかし「鉄道がなくても地域は発展できるか」という課題として、鹿屋市の事例は夕張市にとって心強いはずだ。
バスの後部窓から鹿屋市街を眺める。中心部は商店街が形成され、郊外は大型ロードサイド店舗が目立つ
鹿屋市街の交通はバスが中心。鹿児島中央駅、鹿児島空港へ直通バスがある。市営のコミュニティーバスも運行されている。鹿児島市へは鹿児島湾のフェリーを使った方が早く着く
石勝線支線、かつての夕張線を「石炭で栄えた時代の証であり、地域活性化の頼みの綱」と思う人もいるだろう。しかし「栄えた時代の証」は、残酷に言えば遺跡でしかない。鉄道がなくなれば地域は衰退するという見方も確かにある。しかし、夕張市は既に衰退しきった財政再建団体だ。この先、鉄道あれば再活性化できるとは限らない。
鹿屋市の事例と夕張市の決断は、「地域の発展に鉄道は必要」「鉄道がなければ地域は衰退する」という常識に風穴を開けた。両市の今後の動向が、ローカル線廃止問題に悩む地域にとって新たな視点を示すだろう。
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