高齢者カモ疑惑 PCデポの「初動対応」があまりにもお粗末だったのはなぜかスピン経済の歩き方(1/5 ページ)

» 2016年08月23日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

スピン経済の歩き方:

 日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。

 「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。

 そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。


 先週、PCデポが大炎上した。

 発端は8月14日18時ごろ、独居で暮らしている80歳男性の息子さんが投稿した以下のようなツイートだった。

 『80過ぎの独居老人である父が、PCデポに毎月1万5千円の高額サポート契約を結ばされてました。解約に行ったら、なんと10万円もの契約解除料を支払いさせられました!!とんだ悪徳業者です』

 息子さん曰く、『ファミリーワイドプランというのを軸に様々なオプションをセットされ』ており、『その中にipadair16g本体』も含まれていたそうで、このもろもろのオプションをすべて解約したところ、『当初20万円の契約解除料を請求され、ゴネたら10万円』になったそうだ。

 8月16日にPCデポ本社より、『不愉快な思いをさせたことは謝罪する。・契約には正当性がある。・解約料も適正。・消費税も適正。・IPADは渡してある。父が使用したログも残っている』という連絡を受けてその後、話し合いの場を設けたが、交渉は決裂したようだ。息子さんは『PCデポ社の不誠実な対応には本当にあきれました。今後はメディアを通して世に問いたいと考えております』と徹底抗戦の構えをみせている。

 もちろん、上場企業である以上、PCデポ側も黙ってやられているわけにはいかないだろう。「契約には正当性がある」というのなら、それなりのカウンターを繰り出すはずだ。ここは心ゆくまで殴り合って、高齢者ビジネスの有り様を考えるためにも、ぜひ白黒ハッキリつけていただきたいと思う。

 ただ、そんな両者の対決より、個人的には気になることが別にある。それはPCデポの「初動対応」だ。

 14日夜の炎上を受けて、PCデポが公式Twitterに「声明」を出したのは15日17時、公式サイトに同じ文面で取締役管理本部長名義のものを出したのは16日と、およそ1日が経過してからとなっている。これは昨今のSNS対応のセオリーからすると、驚くほど遅い。

 SNS炎上を未然に食い止め、「神対応」などと称賛される企業というのは、発生後数時間以内になにかしらの対応をとっていることが多い。これは企業として誠意をもって問題にあたっているという姿勢をネットユーザーに示すとともに、なによりも一方的な主張や事実誤認の拡散を防ぐという意味があるのだ。

PCデポの対応を受け、ネット上で炎上した
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