土肥: それ、いいじゃないですか。釣り竿のような感じですよね。必要なときにどんどん伸ばして、必要のないときには縮める。
尹: それではダメなんですよ。釣り竿でいえば、どうしても手元の部分が残りますよね。そうすると、その部分が邪魔になる。図体の大きなロボットだけれども、使える範囲は狭いという話になりますから。
土肥: なるほど。
尹: 家電のように誰でも簡単に使えるロボットをつくりたいなあと思っていました。というのも従来のロボットは現場に導入されても、素人は使うことができませんでした。構造が複雑ですし、動かすのは難しいですし。というわけで、どのように使ったらいいのかを教えてくれる人がいます。しかし、コロは家電のようなロボットを目指してつくったわけですので、そのような人を配置する必要がありません。
土肥: それでも動かすのは難しいのでは?
尹: UFOキャッチャーができる人であれば、問題ありません。電源もコンセントに差し込むだけでOK。
土肥: そもそも、なぜロボットを開発しようと思ったのでしょうか?
尹: 日本って人口が減少していますよね。将来、労働力が不足するのは間違いない。「人口を増やしたら?」「移民を受け入れたらいいのでは?」といった声もありますが、いずれも実現することは難しい。ということであれば、「不足分をロボットに任せてみてはどうか」と考えました。でも、現場で動いているロボットをみると、柵の中に入れられている。人と一緒に働いている状況とは言えませんでした。
肘をなくして、手足が伸び縮むことができるロボットをつくれば、労働力不足を解消できるのではないか――という想いから開発がスタートしました。しかし、2008年にリーマンショックが起きたとき、どんなことを言われたと思いますか? こちらが「人手不足を解消するために、ロボットを開発している」と言ってもなかなか受け入れられなかったんですよ。なぜなら、景気が悪かったから。失業者がどんどん増えていたのに、「人手不足を解消する」といった話をしていたので、多くの人から「労働者を減らしてどうするんだ! ますます景気が悪化するじゃないか!」といった感じで非難されました。
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