「YAMAHA」という文字を見て、どのような製品を想像するだろうか。「そーいえば、ウチの電子ピアノに『YAMAHA』と書かれていたはず」「学生時代に乗っていたバイクは、YAMAHA製だったなあ」という人も多いのでは。このほかにもさまざまな製品にこのアルファベット6文字が記されているが、「えっ、それもYAMAHAだったの!?」という商品がある。例えば、学校のプールだ。
学校のプールはどこがつくっていると思いますか? と聞かれても、ほとんどの人は考えたこともないので、うまく答えることができないはず。「うーん、ゼネコンかな」といった感じで。実は、ヤマハ発動機は40年以上前からプール事業を手掛けていて、2016年6月時点で20メートル以上のスクールプールを6000基以上も出荷しているのだ。
「ヤマハ発動機」と聞くと、オートバイ、電動アシスト自転車、ボートなど、“動く製品”を想像すると思うが、なぜそのような会社がプールをつくっているのか。答えは「ボートやヨットの技術を応用しているから」である。ボートやヨットの船体に使用している素材「FRP(繊維強化プラスチック)」を使って、何か違う商品をつくることができないか? 水に浮かべるボートに使えるのなら、逆に水をためることにも使えるかもしれない――。こうした発想でプールをつくったところ、耐久性や安全が高く評価されることに。
1970年代まで、学校のプールと言えば「コンクリート製」が主流だった。しかし、その後、安全性の問題などからコンクリートは避けられていく。代わって登場したのが、FRPやステンレスである。2015年の市場シェアをみると、FRPが54%、ステンレスが41%、コンクリートにいたってはわずか5%である。半数以上を占めているFRPプールの92%はYAMAHAブランドが占めているのだ(同社調べ)。
当時の担当者は「プールをつくれば売れるだろう」と夢を描いていたのに、ほとんど売れなかった。しかし、いまやトップシェアを独走……いや独泳状態である。どういったきっかけで、YAMAHAのプールが広がっていったのか。同社でプール事業を担当している小川恭弘さんに話を聞いた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。
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