マクドナルドが「使っている卵は100%国産」という謎アピールを始めた理由スピン経済の歩き方(4/4 ページ)

» 2016年09月13日 07時50分 公開
[窪田順生ITmedia]
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「マクドナルド」というビジネスモデル

 さらに言えば、「100%」アピールも今後「裏目」にでる恐れもある。

 実は、本国アメリカでマクドナルドは大変な窮地に立たされている。米消費者団体専門誌『コンシューマー・リポート』によると、全米21のハンバーガー・ブランドの中でマクドナルドは最下位。もちろん、健康志向の高まりもあるが、これは米国で最近、食材を一切冷凍せず、その場でつくった「グルメバーガー」と呼ばれる高級ハンバーガーが、若者を中心に人気を博しているからだ。

 この流れは、日本にも押し寄せている。昨年秋に上陸し、近く東京・有楽町にもオープンするニューヨークの「シェイクシャック」は、高級食材として知られる「成長ホルモン剤をつかわないアンガスビーフ100%」をうたって人気を博してきた。やはりこの秋に上陸するロサンゼルスの「ウマミバーガー」も、「高級ステーキ店で提供する品質の高い肉」をセールスポイントとする。

 このように競合が独自の品質の高さをうたうなかで、「卵は国産100%なんです、すごいでしょ」「ビーフも100%なんです。90%じゃないんですよ」と声高に叫べば叫ぶほど、自慢する次元の低さが際立ってしまうのだ。

 なんて感じで「100%こだわり」キャンペーンの行く末を案じているところへ、過去に行った「昼マック」を思わせる「ランチ割引」を復活させるというニュースが飛び込んできた。消費者の節約志向の強まりで、外食産業の値下げ圧力が広まり、マクドナルドとしても客単価を下げ、客数を上げるための路線変更らしいが、経済誌で「迷走」などとバッサリやられた。

 コスト高によって収益が圧迫している中で、単価を下げつつ、品質を上げていくというのは、財源がないくせに、社会福祉を充実します、というのと同じくらい支離滅裂な話だ。

 Pokemon GOという「神風」に頼っても、効果は限定的だったという。

 個人的には、「マクドナルド」というビジネスモデルを根本から見直すべき時期にさしかかっている気がしている。まずは手始めに、「100%を訴求しなくてはいけない」という強迫観念から一度解き放たれてみてはいかがだろうか。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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