金融ビジネスを変革する フィンテック革命最前線

加速するフィンテック なぜ銀行の既存ビジネスを破壊するのか加谷珪一の“いま”が分かるビジネス塾(3/4 ページ)

» 2016年11月15日 06時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]

日本でもようやくビットコインの法整備が進む

 ここまで説明してきたフィンテックは、銀行を中心とする既存の金融機関のサービスを補完したり、金融機関と共存できるサービスということになる。だが、これから説明する海外送金や仮想通貨という分野は、場合によっては、銀行のビジネスモデルそのものを破壊する可能性を秘めている。実はフィンテックが持つ本質的な意味はここにある。

 仮想通貨といえばビットコインが代表的だが、日本ではビットコインの法整備がかなり遅れていた。2014年に国内の取引所である「マウントゴックス」が経営破綻(たん)したことから、ビットコインをどう位置付けるのか国際的な議論となった。日本国内では、新しい技術に対するヒステリックな反発が根強く、政府はいち早くビットコインを「通貨」ではなく「モノ」であると位置付けてしまったのである。

 一方、米国など主要各国は、ビットコインの将来性を考え、逆に通貨として認める方向制で法整備を進めてきた。今ごろになって政府は日本が国際的に取り残されていることに気付き、改正資金法を可決して、ようやくビットコインを準通貨として位置付けた。粘り強く立法活動を進めてきた与党内の一部議員の存在がなければ、日本は半永久的にビットコインの市場から閉め出されていたかもしれない。

 ビットコインには、国家の管理を必要としない新しい通貨という側面と、世界各国共通で利用できる決済手段という2つの側面がある。前者は中央銀行など政府が持つシニョリッジ(通貨発行益)を、後者は銀行が持つ送金というビジネス領域を脅かす可能性があり、潜在的な影響力は大きい。ビットコインのビジネスはリスクもあるが、大きな可能性を秘めているとみて良いだろう。

photo ビットコインが既存のビジネスを脅かす?

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