インタビュー
» 2016年12月03日 17時00分 UPDATE

「ハリポタ」「ファンタビ」Pに聞く:大ヒット「ファンタビ」Pの仕事術に迫る

11月23日に公開し、興行収入100億円超も視野に入るヒット映画「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」。社会現象となった「ハリー・ポッター」の新シリーズだ。大ヒット映画において、プロデューサーはどのような仕事をしているのか? 本作のプロデュースを担当するデイビッド・ヘイマン氏に聞いた。

[青柳美帆子,ITmedia]

 11月23日公開の映画「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」。社会現象となった「ハリー・ポッター」の新シリーズで、“魔法動物学者”のニュート・スキャマンダーが主人公だ。初日の興行収入は「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」の記録である4億6000万円を大きく上回り、興行収入100億円越えも狙えるロケットスタートとなっている。

大ヒット「ハリポタ」新シリーズ。魔法使いニュートが魔法動物とともに活躍する

 「ファンタスティック・ビースト」を制作するのは、「ハリー・ポッター」シリーズでおなじみのメンバー。脚本は「ハリー・ポッター」原作者のJ.K.ローリング氏、監督は「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」「謎のプリンス」「死の秘宝 PART1、PART2」のシリーズ4作を撮ったデイビッド・イェーツ氏だ。

 プロデューサーを務めるのはデイビッド・ヘイマン氏。シリーズ累計の興行収入で世界記録を持つ「ハリー・ポッター」全8作、アカデミー賞7冠「ゼロ・グラビティ」、ウィル・スミス主演「アイ・アム・レジェンド」など、ヒット作を数多く生み出している。「ファンタスティック・ビースト」の公開を記念して、ヘイマン氏に「ヒット映画を作るために必要なこと」を聞いた。

その前に……「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」ってどんな映画?

 ストーリーは、ニューヨークに1人の魔法使いが降り立つところから始まる。ニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)は、世界各地をめぐって魔法動物の調査と保護を行ってきた。彼が持っているトランクの中は、絶滅から救われたたくさんの魔法動物たちのすみかとなっている。

ニューヨークに降り立った魔法使いニュートを描いた物語

 1926年の米国魔法界のオキテは「魔法使いの存在は絶対に知られてはならない」。魔法使いと普通の人間(ノー・マジ)の間には、深い溝が存在しているのだ。魔法使いの存在に気付き恐ろしい闇の魔法使い「グリンデルバルド」に対する警戒態勢が敷かれていた。そんな中、ニュートは騒ぎを引き起こしてしまう……。

 「ファンタスティック・ビースト」の物語は、J.K.ローリングが2001年に“ホグワーツ魔法魔術学校で使われる教科書”として著した「幻の動物とその生息地」の世界を膨らませたもの。主人公のニュートはその教科書の著者(という設定)であり、映画は彼が本を書くまでのいわば“序章”になっている。舞台もこれまでの現代英国から一変、1920年代の米国だ。

 このように説明すると「ハリーポッター世代に向けたファンムービーだろうか」と思われるかもしれないが、事前知識はなくても楽しめる新シリーズだ。ただし、なじみのある名前や小ネタが登場するので、ファンはより深く楽しめる仕組みになっている。

ニュートと魔法生物たちを魅力いっぱいに描いたストーリー

プロデューサーの仕事は「監督のパートナー」

――「ファンタスティック・ビースト」、非常にワクワクする作品でした。観客の反応はどのようなものでしょうか。

ヘイマン: ワーナーは、マーケティングをするためにテスト試写を行うんです。「大人はどう思うかな」「家族で見たらどういう反応だろう」と知りたがる。本作は大人から子供まで楽しんでくれました。若い観客でも、大人と同じようにストーリー、キャラクター、テーマを理解してくれたという結果が出ています。

――本作におけるヘイマン氏のプロデューサーとしての役割はどのようなものですか?

ヘイマン: 本作に限りませんが、“監督のパートナー”ですね。監督をサポートして、監督が実現しようとしているビジョンを現実のものにする手助けをする。その一方で、作品を守り、監督に安心して映画を作ってもらうために、監督に対して難しい質問を投げかけたり、誰よりも厳しい意見を言うことがあります。映画を最高のものにしたいと思っているから。

 同時に、さまざまな部門とのコンタクトにもなっています。投資家や財務方面の担当者の意見を聞き、マーケティング戦略を行うスタジオともコミュニケーションを取っている。私は映画のことをよく知っていますので、予告編やポスターなど作品の素材を観客に向かって出す時に、よりよく紹介できるんです。ただ、良いマーケティングは、本質的に良い映画に付帯するもの。だからやはりプロデューサーとしての一番重要な役割は、クリエイティブな“声”として、監督や脚本家を支えることですね。

――日本と英国、米国などで、本作の宣伝について変えたことはありますか。

ヘイマン: 分かりやすい例はポスターです。いろいろな地域によってニーズが違うので、国によってさまざまなリクエストが来る。例えば、日本版のポスターの中にはコリン・ファレル氏が大きく入っていますが、それは日本で彼が良く知られているから。私はマーケティングのチームの声を信頼しています。信頼した上で、私たちが作った映画をきちんと反映しているポスターであるかどうかを考えて承認しています。

コリン・ファレル氏が登場する本作。日本のPRではコリン氏が強調されるポスターも

毎日が新しい体験

デイビッド・ヘイマン氏

――ヘイマン氏はさまざまな作品のプロデュースをしています。作品によって難しさの違いはありますか?

ヘイマン: それぞれのストーリーは、それぞれで求められることも、問題も違います。なので、柔軟性を持って仕事に励みます。

 ハリーポッターは、原作が非常に支持されている。ファンは本を読んで「ハーマイオニーはこういう女の子」「ホグワーツはこういう学校だろう」とイメージを作って、意見を持っている。そういう意味ではとてもユニークな作品ですね。「ゼロ・グラビティ」は、宇宙をモチーフにした作品なので、宇宙に関しては本物を作り込まなければいけない。「ファンタスティック・ビースト」は、まだ皆さんの頭の中に生まれていない“魔法動物の世界”を作っていく難しさと面白さがあります。

 映画作りはクリエイティブなビジネスです。プロデューサーの仕事は、監督をはじめとしたみなさんが自由に作品に集中できる環境を作り、クリエイティビティを奨励することです。あまりにも“プッシュ”したら崖から落ちてしまいますが、バランスを取りながら可能な限り一番いいところまでもっていく。

 映画を作るときは、いつも最初からやり直しで、同じ経験を繰り返すことはない。毎日、瞬間瞬間が全く違います。だから、私は世界中で一番幸運な人だと思います。

――本作で特に“初めての経験”だと思ったことは?

ヘイマン: ジョー(J.K.ローリング)の世界では、キャラクターを作るときに“前例がないもの”を作らなければいけない。それは初めての経験でした、また、本作の舞台は1926年のNYで、映画においては街1つを全部作っています。

 特に印象深かったのは、衣装デザイナーのコリーン・アトウッド氏との仕事ですね。彼女はティム・バートンの数多くの映画で衣装を手掛けています。彼女の仕事は、どんどんプッシュして素晴らしいところに到達しようとするもの。エキストラの人の衣装合わせにも全部関わり、どんなエキストラも彼女が目を通さないでシーンに入る人は1人もいなかった。

 本作のメインキャラクターのニュートとティナの衣装は、美しくはありますが一見すると目立つようなものではない。でも、エキストラの中に彼らが立つと、目立たないと思った衣装でも、すごく目を引くんです。フレームの中でいろいろな人がいる中で、観客の目がそこに引き寄せられるような衣装なんですね。ビジュアルでストーリーを語ることができました。

 これらは分かりやすい例ですが、毎日毎日、違うことをやっていますよ。俳優も、シーンも、ビジュアルエフェクトも、ストーリーも違う。

――今後の展開を教えてください。今回はアメリカの魔法学校が登場しましたが、日本にも魔法学校がある設定がありますね。日本が登場することもあるのでしょうか。

ヘイマン: この次に登場するのはパリの魔法学校なんです。このシリーズはジョーの決めることですが、私としては日本で撮れたらすごくうれしいですね。来るたびにインスピレーションを受ける大好きな国ですから。

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