「DMV」計画実現へ、徳島県はホンキだ杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/5 ページ)

» 2017年01月20日 07時30分 公開
[杉山淳一ITmedia]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP


 「DMV(デュアル・モード・ビークル)」は、マイクロバスの車体に鉄道用の車輪を付けて、線路と道路の両方を走行可能な車両だ。そのメリットとデメリットについては、2013年9月に山形県で導入が検討されたときに紹介した。JR北海道単独の取り組みだけではなく、国土交通省も導入・普及に向けた検討会を開催していた。

 DMVについては、2004年にJR北海道が試作車を発表後、赤字ローカル線の再生を目指す各地の自治体などが関心を寄せた。2008年までに富士市、大井川鐵道など10の自治体および企業が導入を検討し、一部ではJR北海道から車両を借り受けて実証実験も行われた(関連リンク)。

 しかし、その後は進ちょくが報じられないままだった。導入を検討した三木鉄道、高千穂鉄道は廃止された。秋田内陸縦貫鉄道は赤字経営の改善を優先し、いすみ鉄道、小湊鐵道は観光列車で経営改善に取り組んでいる。大井川鐵道もDMVを検討したころに経営危機に陥っている。その後は「きかんしゃトーマス」で息を吹き返した。

 DMVに頼った路線は倒れ、DMVを見限った鉄道は新たな活路を見いだして生き残る。こうした客観的な事実を見聞きすると「DMVに手を出すとろくなことがない」という印象になる。そもそも、開発元のJR北海道が実用化できていないモノに頼ろうとする考えが甘い。貧すれば鈍するではないか。

 開発元のJR北海道では、2011年の石勝線特急脱線火災事故を契機とする不祥事が次々に発覚した。私が山形県の導入検討を紹介して間もなく、レールの保守管理の杜撰(ずさん)さが指摘され、国土交通省から2度目の特別保安監査が入る。このあと、JR北海道は新幹線と安全へ経営資源を集中させる方針となった。2014年にDMVの自社導入を断念し、2015年に開発そのものを停止した。

 しかし、DMV計画は生きていた。徳島県で実用化に向けて動き出したのだ。

徳島県は阿佐海岸鉄道とJR四国の牟岐線でDMVを計画。実証実験は牟岐〜宍喰間、実用化は阿波海南〜甲浦が鉄道区間、甲浦〜室戸が道路区間となる(出典:徳島県「第1回 阿佐東線DMV導入協議会 資料」) 徳島県は阿佐海岸鉄道とJR四国の牟岐線でDMVを計画。実証実験は牟岐〜宍喰間、実用化は阿波海南〜甲浦が鉄道区間、甲浦〜室戸が道路区間となる(出典:徳島県「第1回 阿佐東線DMV導入協議会 資料」
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