「働き方改革」は、健康寿命を延ばす長時間労働の是正から(1/2 ページ)

» 2017年01月24日 05時30分 公開
[川口雅裕INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:

川口雅裕(かわぐち・まさひろ)

 組織人事コンサルタント (コラムニスト、老いの工学研究所 研究員、人と組織の活性化研究会・世話人)

 1988年株式会社リクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報および経営企画を担当。2003年より組織人事コンサルティング、研修、講演などの活動を行う。

京都大学教育学部卒。著書:「だから社員が育たない」(労働調査会)、「顧客満足はなぜ実現しないのか〜みつばちマッチの物語」(JDC出版)


 働き方改革では、まず長時間労働の是正から手が付けられようとしている。これについては、30年以上前から欧米に比べて労働時間が長すぎるという指摘はあったし、行政や企業でもそれなりの取り組みは行われてきたが、ほとんど成果はなかった(年間総労働時間が減ったのは、パート・アルバイトなどの非正規あるいは短時間勤務者の比率が増えたからで、正社員ではあまり変わらない)。ところが、2015年にファストフードなどの飲食業界の労働環境が問題になり、2016年には電通の社員の自殺があって、政治も企業も以前とは違う本気度が感じられる。

 染み付いた仕事の進め方の問題もあるし、組織風土はすぐに変わるものではないし、何より、現状は「働いた時間分は残業代がもらえる法制度」なので、残業が減ると手当が減るために労働者ももろ手を挙げて賛成はできないという事情もあって、急に労働時間が減るような期待はできない。しかし、徐々にでも労働時間が減っていくのは、今の生活というより、むしろ先々に必ず迎える高齢期を見据えると、非常に良いことである。

 早く帰宅すれば、趣味ができる。また現在、規制緩和が検討されている“副業”“兼業”にも取り組める。正社員で働いてきた人が高齢期に時間と能力を持て余すのは、やりたいことがないからである。仕事に時間や活力をとられすぎて、趣味を得たり、会社の仕事とは関係のないスキルを磨いたりする余裕がなかったわけだ。その結果、高齢期に生きがい、やりがい、交流をなくしてしまい、心身の衰えが加速していってしまう。若いうちから、早く帰宅して趣味や副業に取り組めば、引退してもその延長で暮らせるから、急に衰えることはなく、長く健康を維持できるはずだ。

残業が減ると手当が減るという現状も……(画像と本文は関係ありません)
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