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» 2017年02月28日 08時00分 UPDATE

スピン経済の歩き方:地方の焼酎が、10年後に世界一になったワケ (1/6)

熊本県で「世界一の焼酎」が売られていることをご存じだろうか。「川辺」という銘柄だ。創業115年の酒造がつくったものだが、なぜ世界一になることができたのか。背景を調べてみると、その老舗は以前から世界の常識・日本の非常識に取り組んでいて……。

[窪田順生,ITmedia]

スピン経済の歩き方:

 日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。

 「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。

 そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」に迫っていきたい。


熊本で「世界一の焼酎」が売られている(写真はイメージです)

 先日、所用で熊本県人吉市(ひとよしし)を訪れたところ、街灯や飲食店など町のいたるところに「繊月」(せんげつ)という看板があることに気付いた。

 繊月とは三日月よりもさらに細い月の意で、看板にその繊月のイラストも描かれている。「はて? 仙台の『萩の月』みたいな銘菓かなにかかしら」と、地元の方にうかがったところ、「球磨焼酎」のひとつで、ここいらではかなり人気の銘柄だと教えてくれた。

 ご存じない方もいると思うが、球磨焼酎とは、人吉球磨地域でつくられる米焼酎。現在、日本では数多の本格焼酎が乱立しているが、WTO(世界貿易機関)から地域名をうたうことを許されているのは、芋からつくられる「薩摩焼酎」、麦からつくられる「壱岐焼酎」、タイ米からつくられる「琉球泡盛」、そして米からつくられる「球磨焼酎」の4ブランドしか存在しない。

 現在、球磨焼酎を名乗ることが許される酒蔵は地域に28あるが、その多くは時代の流れで米焼酎だけではなく、麦焼酎や芋焼酎なども製造している。そんな中で、繊月を製造している「繊月酒造」は創業115年という老舗ながら、米焼酎一筋を貫いており、そういうブレない姿勢も地元のファンから愛されている所以(ゆえん)らしい。

 聞けば、繊月酒造の焼酎蔵は見学ができるという。観光客用の足湯なんかも併設されているので、長距離運転の休憩がてらフラリと立ち寄ったところ、思わぬ発見があった。

 なんと「世界一の焼酎」が売られていたのだ。

 それは「川辺」という銘柄だ。案内の方が丁寧な説明をしてくれる酒造見学を終え、試飲場へ行くと、売店の一角に大きくディスプレイされていた。そこへ近づいてみると傍には、「ロサンゼルス ワイン&スピリッツ コンペティション」という品評会の焼酎部門で、2013年に金賞に輝いたとして、賞状とメダルが飾られている。

 この品評会は、世界最大規模のワイン品評会IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)などと並ぶポピュラーなもので、80年近い歴史を誇っており、2013年から焼酎部門が新設された。つまり、川辺は初代チャンピオンというわけだ。

 いや、そういのは「モンドセレクション金賞」みたいにわりと簡単にとれるんでしょ、と思う人もいるかもしれない。確かに、この品評会の焼酎部門にも原料ごとに金賞がもうけられているものの、この川辺はその金賞グループ内の頂点にあたる「BEST OF SHOCHU」に輝いているのだ。

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