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» 2017年03月25日 08時00分 UPDATE

宇宙ビジネスの新潮流:日本が“New Space”で世界に勝つための条件 (1/3)

民間宇宙ビジネスイノベーション“New Space”が世界的な潮流となりつつある。この分野で日本の勝機はあるのだろうか? 有識者たちが議論した。

[石田真康(A.T. カーニー),ITmedia]

 前回の連載コラムに引き続き、2月28日に開催された、日本初の民間による宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE 2017」の様子をお届けしたい。後半のパネルでは日米欧のキープレイヤーが世界的な潮流となりつつある民間宇宙ビジネスイノベーション“New Space”に関して熱く語った。

パネル3「グローバルでの宇宙ビジネスの状況と日本の可能性」

 このパネルでは、米国ワシントン大学ジャクソン国際関係論大学院副所長のサーディア・ペッカネン教授、欧州でベンチャー投資と政府向けのコンサルティングを行うスペーステックキャピタルのレイナー・ホルンCEO、月面無地探査チームHAKUTOを運営するispaceの袴田武史CEOが登壇して、世界および日本の宇宙ビジネスについて語り合った。

 「各国・各地域の宇宙ビジネス環境は変化している。Volume(量)、Private investment(民間投資)、Legislation(法整備)、Governmental policy/support(各国政策・政府支援)、Non-space industry(異業種企業)が“New Space”の隆盛のキードライバーとなっている。パネリストの方々の見立てはいかがか?」(モデレータの西村あさひ法律事務所の水島淳パートナー弁護士)という投げ掛けとともにパネルは開始された。

左から水島氏、ホルン氏、ペッカネン氏、袴田氏 左から水島氏、ホルン氏、ペッカネン氏、袴田氏

 サーディア氏は「米国で宇宙産業への注目が高まっており、特にNew Space は極めてホットだ。私のホームタウンのシアトルは巨大な宇宙ハブ都市だが、エンジニアタレントをひきつけるだけでなく、ジェフ・ベゾスやポール・アレンなどの富豪たちの存在も重要だ。また小型衛星、ビッグデータ、機械学習という重要な要素の中心地でもある」と紹介した。また「米国では億万長者による宇宙ビジネスへの参入は大きな変化であり、新しい世代の多くの人々を刺激している。また、政府機関も民間企業からのサービス購入やシード投資など重要な役割を担うことが可能だ」と話した。

 他方、欧州を代表するレイナー氏からは「“New Space”はBusiness philosophy、Financing、 Technology、Regulatory environmentが特徴的だ。技術では、かつて宇宙開発競争がIT産業形成の根幹となったが、今は逆にITが宇宙ビジネスに、高度なプロセシング、ソフトウェア、反復型開発手法、さらにはベゾスやマスクなどの新しい人材と新しい投資コミュニティーを持ち込んでいる」という声があった。「欧州では商業宇宙が重要アジェンダに掲げられており、ルクセンブルク、ドイツ、フランス、イギリスなどの政府がさまざまな政策を行っている。また欧州にはR&Dフェーズからインキュベーション、ベンチャーキャピタルと各段階で支援するエコシステムが存在する」と特徴を語る。

 袴田氏は「日本は宇宙関連の素晴らしい技術蓄積を持っているが、それを十分ビジネスにつなげられていないのが課題だ。New Space分野の企業数は欧米と比較すると少ないが、自分たちの月面輸送、アストロスケールのデブリ除去、ALEの流れ星など世界的に見てもユニークなビジネスをやろうとしている」と可能性を訴えた。他方で「日本では欧米と比較するとスタートアップ企業に対する政府支援は限定的だ、単純な補助金などを超えて、政府によるサービス購入などがあるとスタートアップ企業が事業モデルを構築する上で良い機会になると思う」と期待を寄せた。

 パネル2でも論点に上がった宇宙産業と異業種産業のかかわりは、「宇宙ビジネスのデジタル化だけではなく、宇宙ビジネスが自動車、輸送、農業など他産業のデジタル化を可能にしている。特にCommunication(通信)、Positioning(測位)、Geo-intelligence(知能化)、Autonomous motion(自動化)がキーワードだ」(レイナー氏)、「宇宙インフラは次世代の“Critical Infrastructure”だ。米国では小型衛星、ソフトウェア、ビッグデータ、機械学習がリアルゲームチェンジャーであり、宇宙空間だけで考えるのではなくて、地上の異業種産業も含めた包括的なインフラのあり方を考えるべきだ」(サーディア氏)などと意見を交わした。

 最後に袴田氏は「HAKUTOのプロジェクトでも多くの異業種企業がサポートをしてくれている。彼らは宇宙コンテンツが自社ブランドを強化するものとして見ている。HAKUTOはBtoCプロジェクトだと考えているので、こうした企業の支援を求めていた。他方、ispaceとして将来月の水資源開発を進める際にも、エンジニアリング企業や建設企業などにも機会があると思う」と宇宙産業の裾野の広がりを語った。

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