携帯電話事業者(キャリア)が、第5世代移動体通信技術(5G)の開発に注力している。高速かつ大容量の通信が可能になる5Gは、一般ユーザーのスマートフォンやPCなどでのインターネット利用がより便利になるほか、IoT(モノのインタ―ネット)や自動運転などに応用することで、ビジネス面でも大きな発展が期待されている。
各社は2020年の実用化を目指して国内外の通信関連企業と提携し、実証実験などを相次いで開始。都市環境での接続状況の検証などを進めている。一連の取り組みを以下にまとめた。
KDDIは5月11日、NHKと共同で、5Gを活用した映像配信の高度化に向けた実証実験に取り組むことを発表。移動中の自動車に設置したNHKのカメラの映像を5Gによって中継し、近隣のKDDIのビル内に設置した8Kモニターに投影する実験を5月中にも始めるという。
KDDIとNHKは18年以降、スタジアムなどのスポーツ会場内で、5Gを活用した8K映像によるスポーツ中継の実証実験を開始予定。将来的には、手元の端末上で、複数のカメラの映像を切り替えて視聴できる観戦サービスの提供を目指すとしている。
また、KDDIは12日、フィンランドの通信大手Nokiaと共同で行った実証実験の結果を明らかにした。
実験では、KDDI総合研究所(埼玉県ふじみ野市)内に設置した5G無線基地局と、約100メートル離れた集合住宅との間で5Gによる通信を実施。5Gは高い周波数を使用するため、屋内に浸透しづらいという課題があるが、実験では28GHz帯を使用し、都市圏の屋内でも1Gbps程度の高速通信が可能なことを実証したという。
KDDIとNokiaは昨年、5G技術の開発に向けた基本合意書を制定しており、今後も共同開発を進める方針だ。KDDIは、「詳しい時期は未定だが、今後、さらに遠距離・高周波数での実験も検討中」(広報担当者)としている。
ソフトバンクと同社傘下の米Sprintは5月10日、5Gに対応したサービス・端末の実用化に向け、米通信企業のQualcommとの提携を発表。5Gの帯域では比較的低く、屋内に浸透しやすい周波数の2.5GHzをに対応した商品を開発する方針を明らかにした。
ソフトバンクグループの孫正義社長は、同日行われた決算発表会で「今回の提携はとても大きな成果。世界でどこよりも早い19年末までに商品提供を始めたい」と意欲を見せた。
また、孫社長は、「5Gは高い周波数を使用するため、大規模なマクロの基地局から、少ない電波を飛ばすという形では難しい。スモールセルで、多くの場所から電波を飛ばす必要がある」と説明。
この課題を解決するため、Sprintは「Magic Box」と呼ぶ発信機をさまざまな建物の内部に設置することで、通信環境を向上させる実証実験を米国内で今春から開始。ニューヨーク、サンフランシスコなど主要6都市で、通信の高速化を実現したという。
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