社内の交流が少ない、ブランド価値を高めたい、もっと活気がほしい……。企業が抱えるさまざまな課題を解決するために、全ての働く人の生活と切り離せない「食」をヒントにできないだろうか。食事を取るだけでなく、コミュニケーションやリラックスの場所として機能するようになった社食は、いまや会社の“顔”にもなっている。社食にまつわる取り組みから、改革のヒントを探る。
→第1回 本記事
→第3回 社食でついつい選んでしまう「健康メニュー」とは何か
重要な経営課題として認識されつつあるワークスタイル変革。その実現に総務部門の働きは欠かせない。しかし、社員全員の働き方を見直し、変えていくことは簡単ではない。そこで、切り口の1つとして「社員食堂」に注目してみてはどうだろうか。安くて量が多い、いわゆる“食堂”のイメージはもう古い。社内コミュニケーションの活性化、モバイルワーク推進、健康への意識向上など、さまざまな課題に対応する機能を持った社食が増えているのだ。
この特集では、最新の社食の傾向と取り組み事例を紹介しながら、課題解決に向けた一手として社食を改革する方法を探る。
社食は目覚ましく進化している。とは言っても、きれいな設備で、メニューが充実している……というぼんやりとしたイメージしか浮かばない。最近の社食事情について詳しく知るために、企業の社食を紹介するWebサイト「社食.com(ドットコム)」のスーパーバイザーとして活動する、帝京大学法学部の露木美幸准教授に話を聞いた。
露木准教授によると、企業文化や社会情勢の変化と同じように、社食にも発展の歴史があり、3つの形態に分類できるという。
まず、日本の社食の初期形態である「第1世代」。工場など、周辺に飲食店がない事業所で、従業員への食事提供を目的に食堂を設置する形態だ。肉体労働者向けに、量が多くて味付けが濃い食事が多かった。
次に、会社の周りに飲食店があるのに社食をつくるようになった「第2世代」。この形態では、社食を設置する目的は福利厚生だ。会社の外の飲食店と比べて、格安で食事を提供する。多くの場合、スペースが余る地下にあるのが特徴だという。
そして、今、注目されているのは「第3世代」。IT産業が発展したころから見られるようになったという。都心の駅の近くにオフィスを構え、飲食店に困らないのに、あえて社食をつくる。その点は第2世代と同じだが、目的が違う。単なる食事提供、福利厚生にとどまらない。コミュニケーションの活性化、社員の健康増進、地域社会との連携などによって、企業のブランド価値を高めることまで社食が担う。そのため、オフィス内で社食の優先度は高く、社内で最も眺めのよいフロアに設置される傾向がある。
「一番いい場所を社食にするのがトレンド。社長室ではないんです」(露木准教授)。
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