社内の交流が少ない、ブランド価値を高めたい、もっと活気がほしい……。企業が抱えるさまざまな課題を解決するために、全ての働く人の生活と切り離せない「食」をヒントにできないだろうか。食事を取るだけでなく、コミュニケーションやリラックスの場所として機能するようになった社食は、いまや会社の“顔”にもなっている。社食にまつわる取り組みから、改革のヒントを探る。
→第1回 “安い・早い・多い”だけじゃない 社食で企業価値向上へ
→第2回 本記事
→第3回 社食でついつい選んでしまう「健康メニュー」とは何か
「こんな社食があったらいいな」を実現するには、大胆に発想を変えることも必要だ。とはいっても、従来の社食のイメージから脱却することは難しく、現実的にできないこともたくさんある。発想を転換し、“理想の社食”を実現してきた企業の取り組みを紹介する。
虎ノ門ヒルズ森タワー(東京都港区)17階。足を踏み入れると、おしゃれなインテリアが印象的な空間が広がる。まるでレストランのようだが、実は会社の中。システム構築やソフトウェア開発などを手掛ける日本ビジネスシステムズ(JBS)の社食「Lucy's(ルーシーズ)CAFE & DINING」だ。
一味違うのは、内装だけではない。「メインは夜。ランチも提供していますが、ディナーが主体です」。専門部署「Lucy's課」の責任者を務める、総務部長の櫻井正樹氏から驚きの発言。なぜそんなことになったのだろうか。
その理由は、社員の勤務形態にある。JBS本社社員の大半はシステム構築やソフトウェア開発などを担うエンジニア。顧客企業に常駐する勤務が多く、会社にいることが少ない。同僚と顔を合わせる機会も少なくなる。会社としては、「仕事が終わった後に、会社に戻ってきてほしい」という思いがあった。
そのためにはどうすればいいか。出した結論は、「仕事の後に寄りたい店が、たまたま社内にある」という状況を作り出すこと。「外の居酒屋と勝負して勝てるメニュー、サービス、価格」(櫻井氏)を社食で実現することを目指している。
今となっては堂々と語られるそのコンセプトも、すんなりと決まったわけではなかった。2014年夏のオフィス移転に向けて社食開設のプロジェクトも進んでいたが、当初の計画ではランチがメインだった。社食といえば、ランチを手ごろな価格で提供する、ということが大前提。発想を大きく転換することは簡単ではなかった。しかし、設計やレイアウトが完成していくにつれ、漠然と思い描いていたイメージと食い違っていく。あるとき、ついに社長が「これは違う」と、やり直しを決断した。14年春だった。
作りたいのは食堂ではなく、“夜に外食する店”。「そんな発想はなかった」(櫻井氏)ため、コンセプトをはっきりさせるのにも時間がかかった。
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